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Paris

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2018年12月の記事一覧

Paris 10

 別れにはいくつかの種類がある。その中には稀に、別れの際に自身でその種類を判別できるものもあるだろう。またどこかで会うに違いない、といった別れから、これで見納めで、二度と会うことは叶わないという確信や決意とともに告げる別れまで。そしてこの判別がついてしまった時、大抵は、その通りになってしまう。特に、後者の場合は。アムステルダムでのヨナスとの別れは、私にとって後者のものだった。  「どうしてここにいるんだ」と、思わず口をついて出てしまった。無論それは喜ばしいことなのだが、経験

Paris 9

 外し忘れた左腕の時計を見ると、朝だった。身体に怠さが残っている。目が覚めたのは、十分に眠ったからではなく、同部屋の人間たちが朝の支度を始めたからだった。ベッドから起き上がると、まさに部屋を出て行こうとドアノブに手をかけていたバッファローの男と目が合った。「良い一日を」と互いに声をかけ合うと、私は反対方向のベランダに出て、その日一本目の煙草を巻き始めた。  火を点け、最初の一吸いを肺に入れずに吐くと、濃い紫煙がホステルと向かいのアパートメントとの間の舗道の上空に漂い、パリの