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小説ですわよ第2部ですわよ3-1

※↑のつづきです。

 綾子からのチャットは、いくつかに分割されていた。

『本調子ではないけど、月曜から復帰するわ。アヌス02の対策は、週明けから本格的に行いましょう』

『ブルーと2代目つんおじはセーフハウスで保護してる。今のところ無事よ。位置情報を共有しておく。警備はシルバーとレッドに任せてある』

『ゴールドの追跡で、マサヨは弟のアパートへ身を寄せているとわかったわ。ちなみにご家族は、数年前に事故で亡くなっている。デリケートな部分だから、マサヨと話すときは慎重にね』

『マサヨは警察と役場で手続きして、行方不明届けは取り下げられたようね。警察は大して調べもせず、姉弟の喧嘩の末の家出ということで処理したそうよ。この点に関しては気になるから、探りを入れておくわ』

『次元移動バイクと愛助とやらは、今のところ見つかってないみたい。実在しているかも含めて確かめる必要があるわね』

『最後にマサヨの今後について。本人の意思次第だけど、事務所に復帰することを希望するなら受け入れるつもり。単独行動されても困るし、ウラシマのところに行けば動向を追えなくなる。ならば目の届くところに置いておくのがいいと判断した。なにより彼女が被害者である可能性が残っている限り、手を差し伸べるべきだと思っている。異論がある人は月曜に話し合いましょう』

 最後の投稿に、他の事務所メンバーが次々に『いいね』をつけた。舞もやや間を置いてから、ゆっくりと『いいね』ボタンを押した。
 チャットを閉じようとしたとき、さらに綾子が投稿する。

『今日が何の日か、当然みんな知ってるだろうけど、その話題は禁止ね。祝い事がしたいなら私の見えないところでやって。以上、良い休日を』

 綾子はクリスマスが嫌いなのか? その疑問はイチコの投稿で解消された。

『大昔、クリスマスにリアルサンタのソリに轢かれたんだっけ。んで、逆ギレしたサンタに十字架とニンニクぶん投げられて死にかけたんだよね』
『イチコ! あんた地獄に落ちるわよ!!』
『ハハーッ!』

 綾子から、中指を立てた手の絵文字が送られたのを最後にチャットは静まった。一連のやりとりに全部『いいね』して、舞はチャットを閉じる。綾子が復帰することだし、月曜からは明るく騒がしい日々が戻ってくるだろう。

つづく。