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ビル・パーキンス「DIE WITH ZERO」訳:児島修

あけましておめでとうございます。プライベートで別の作業をしており、書き込みの間隔が開いてしまいました。今年も自分のペースで書いて行けたらと思いますので、よろしくお願いします。

今回の本は米国人著者の「Die with Zero」です。タイトルは訳されていませんが、私が訳しますと「財産を残さないで死ぬ」という意味になります。サブタイトルは「人生が豊かになりすぎる究極のルール」ですが、正直あまり良い邦題とは思えません。2020年に日本語版が発行された本ですが、2023年に17刷ということでロングセラーの部類に入る話題の本です。

この本の一番大きなメッセージは、みなさんもっと死ぬ前にお金を使って人生を楽しみましょうというものです。著者はまず身近な友人や自分の例を挙げてお金と人生の在り方を例示します。そこからいくつかの事実や対策を示しながら終始一貫してお金を残して死ぬことがいかに意味のないことなのかについて説明しています。あまり複雑な内容ではないですが、私の方で要約するとおおよそ以下のような話です。

・多くの人が財産を残したまま(使い切らず)死んでいる。老後や未知なる困難に対応しようと働き貯金することに必死になりすぎている。

・人生に最後に残るのは思い出だけ。だから働いて金を稼いでお金を残すことを目的とするような生き方をするのではなく、そのお金をかけがえのない思い出になるような経験に使うべき。

・お金を使うのはほとんどの場合、若い時の方が良い。それは年を重ねるごとに体が動かなくなったり、健康状態が問題となったり、家族ができて責任が重くなったりで自分がやりたいと思うようなことができなくなるから。

・働くのが生きがいであるという人を否定はしないが、入ってきたお金は使い切るべきであり、どこかで仕事に見切りをつけることも重要。お金は墓場までは持って行けない。本来なら有意義に使えたお金を残して死ぬことは無駄なこと。

・寄付することを考える場合でも、寄付は早ければ早いほど良い。困っている人は今の窮状を救って欲しいわけであり、何年後かもわからない寄付者が死んだ後に救って欲しいわけではない。今すぐお金で貢献できなければ時間で貢献すればよい。

・リスクに備えて働きお金を貯めることは重要だが、一方で行動を取らないリスクも考えなければならない。行動しなければ何かを経験できない損失もある。自分のリスクを冷静になってよく考え、不測の事態には保険を利用するなどして安全策を講じれば、より冷静にリスクを考えることができるだろう。

上記のようなことが様々な事例や角度から説明されていて、読みやすいですし、翻訳特有の読みにくさも一切なく理解も難しくありません。

本の内容には関係ないのですが、この著者は米国人なので、日本とは収入レベルや事情が異なるんじゃない?という疑問もあるかと思っています。本の中に数値がありますが、FRBの統計で45歳世帯主の純資産額の中央値は12万4千2百ドルとあります。これは例えば円ドルの感覚値110円辺りで計算すれば1千3百万円強です。資産額に自宅が入っているならば、日本もそれほど変わらないと思いますし、文中でも収入7万ドルの人が給与が多めの層の例になっているので、この本の出版当時は少なくとも日本(といっても都内基準でしょうか)の所得水準と大きく変わっていないだろうと思いました。

一方で投資に関しては日本の方がやや遅れていると思われます。米国人の純資産は70歳半ばまで伸び続けるとありました。これは若い時から米国市場(インデックスファンドなど)に投資し続ける習慣がなせる業でしょう。日本のように退職金をもらってから銀行の勧めで投資信託を買っていたら、死ぬまでにどれぐらい増えているかわかりません。その時の相場によっては減る人も多いはずです。

個人的にはDie with Zero というモットーへの賛同はもちろん、なぜか投資の重要性も理解できました。

人生を逆算して必要なお金を計算したら、そこからは稼いだら何に使うかも考え、リスクを取りながら人生を楽しく生きることに徹するという非常にもっともなお話でした。

興味のある方は本を手に取ってご確認ください。

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