【色褪せた現在】

型落ちの世界を補う科学に機械化される内在

電気仕掛けの記号は

大地に降り立つことのない浮遊するゴースト

検知され計算された自然は

アモーダルな認知を

アブダクティブな推論を

萎縮させていく


人は
実在を信頼する
その直観を捨ててまで

電気気仕掛けのゴーストに
世界を
認知を
推論を
委ねるのか


それは
人の
思考が飛躍する動機を
失うことになる


だが


まだ人は
生き生きとした現在を知っている


ヘッドセットでゲームに興じていても


マトリックスのネオのように
直接電気信号を
神経に流されてはいない


だから


まだ人は
生き生きとした現在を知っている

百六十キロの直球を
バットの芯で捕らえる
大谷翔平のフルスイング
そのとき接する
バットとボールの接地面こそ

生き生きとした現在だということを


大谷が振ったバットに出会うボール

その中心点には
アフォーダンスもアモーダルも
アブダクションもアスペクトも
集約してる

それは色鮮やかな現在だ


観客はその現実を知っている
知っているからこそ
心奮わせるのだ


それがどうだろう


もしも
彼の身体が機械化されていたなら
もしも
彼の神経が機械化されていたなら


観客はこれほど
心奮わせただろうか
観客はこれほど
感情移入しただろうか


大谷翔平は人として最大限の可能性を
グラウンドで表現している


だからこそ


観客は大谷のプレイに共鳴する

野球少年が夢見た大冒険を
観客は色鮮やかな現在として
共鳴しているのだ


そして


もちろん
色鮮やかな現在を表現できるのは
彼だけではない

誰にだってできる

電気仕掛けのゴーストに
実存のすべてを委ねなければ


                2023・7・4


         #現代詩
          #詩

         #大谷翔平  


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