ボーダーラインシフト、BPDにどう対応するのか BPDその5

BPD者の操作性、操作的言動に気づいて、
BPDに気が付いたら、そこからどうしたら良いのか。
ここではその話をしたい。
 
まずそれを認識することで心理的距離を取ること。
気づくだけでも距離は取れるけれど、
距離を取るのと突き放す、毛嫌いするのは違う。
関係を断つ、という選択肢もあるかもしれないけれど、そうもいかないことの方が多いだろう。
つまり、程よい距離を取らなくてはいけない。
 
程よい距離を取ることで、BPD者の操作性や衝動性に対して、周囲の人の耐性を上げること。
すなわち「ボーダーラインシフト」(by市橋)
これにつきる。
 

ボーダーラインシフト


改めて「ボーダーラインシフト」について調べてみると、
驚いたことに成書としてはまとまっていないらしい。

ボーダーラインシフト:Wikipedia
https://x.gd/H8tKt

市橋先生が1980年代末にまとめたもの、
これが「ボーダーラインシフト」として今に伝わる元である。
文献としては「市橋秀夫:境界人格障害の初期治療.精神科治療学 6(7); 789-800, 1991」
約30年前の文献ではあるが、今もその内容は古びていない。
 
ボーダーラインシフト
・なにかしてあげてはならない。
・医師の指示以外のことを行ってはならない。
・話を聞いてあげてもよいが、患者に入れあげない。
・他のスタッフに対する批判を真に受けない。患者の話を真に受けない。自分に対する陰性感情は「症状」の1つと割り切ること。
・起こしたことの責任を患者自身に引き受けさせること。
・大丈夫と言ってあげること。
・互いに情報を綿密に交換する。
・自殺企図などの深刻な行動化が起こっても、過剰反応しない。たじろがない。
・患者の冗談やユーモアの才能を引き出すこと。
・待つこと、我慢させることが治療の力になる。
 

「生暖かく」見守る


「みんなでボーダーラインシフト」で程よい心理的距離を取りながら、
「生暖かく」見守り、関わり続けること。
そうしてゆっくり「だらだらと慣れていく」ように関わり続けることで、
本人が対人関係の距離の取り方に習熟していくこと。
それが治療的であり、周囲の人が支援者であり続けられるように身を守ることがBPDの対応には最も重要なことである。
そう私は理解しています。

つまり、ここにあるのと同じ対応に収束していく。
「打たれ弱過ぎる若者をなんとかしたい!さとり世代のメンタル不調への対処法」
https://sangyoui-navi.jp/blog/55


BPDについての成書


あらためて今の時点でボーダーラインについての成書を探してみると、
そのほとんどが2000年代の出版で、
それ以降はBPDはパーソナリティ障害についての本の一部となっているみたい。
やはりBPDのブームというものはこの辺りで終わったということなのだろう
これは世界的な流れだったのかもしれないと感じる。
 
私がかつて出会った本で、今でも良い本だったと思うのは、
「境界性パーソナリティ障害=BPD 第2版」
– 2010/12/27
ランディ・クリーガー (著), ポール・メイソン (著), 荒井 秀樹 (翻訳)
https://amzn.asia/d/4EIinyw

 
この本で一番勉強になったなと思うのは「ノンボーダー」という言葉。
BPD者の相手、周りの人という意味だが、
BPD者がBPDとなるには相手の人、ノンボーダーが必要だと。
そのノンボーダーの対応によってBPD者は状態が変わり、治りもする。
 
この「ノンボーダー」は個人の構え方の話だが、
「ボーダーラインシフト」はチームとしてBPD者にどう関わるのかの話。
そんな切り取り方、アプローチの違いがとても印象に残っている。

本としては、いかにも翻訳らしい本。
読みにくいと感じる人も少なくないと思う。
まあ「ボーダー」という捉え方も西洋医学的なとらえ方ではあるし、
返ってこんな訳書の方がわかりやすいように感じたりもする。
 

そして、自身がノンボーダーになりやすい属性を持つ人、
そんな人もいるわけで、その話はまた別に。

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