短編小説 私の天使

黒髪がよく似合う色白のやたらと顔が整った男が何故かいつの間にか私の家に住み着いていた
私は彼が何者だから分からず彼の顔を見て混乱を起こした 家族は彼と仲睦まじく食卓を囲んでいた
私が不思議に思い彼を見つめたまま考え込んでいたら艶やかな黒髪に視界を鬱がれてしまった
何が起きたか分からずにいたら彼は「考えてもなんの意味もない」と一言呟いた

何か、何か、大切なことを忘れてしまっている その事だけが彼の一言ではっきり分かった

それと同時に彼はもう1500年以上存在している事も思い出した そして彼は都合が良いように私の周りの人間に私の恋人だと信じ込ませていた 私も特に不都合はないのでそのまま恋人のフリを続けた 近隣の住民にあら、今日もなかよしね〜なんて冷やかされることもある
だが、今日はいつもよりしつこい
何故かって今日は彼が私を背負っているからだ。理由は分からないが…
私は恥ずかしさのあまり彼の背中に顔を埋めてしまおうかと思った
だがその時いつから首にかけていたか分からないエメラルドグリーンに輝くペンダントに目を奪われた 気づいたら握りしめていたがボタンがあることに気づき押したが何も起こらず不思議に思ったら彼は私に「俺に印を」言う
どうしたらいいか分からず困惑する私に彼は首筋を指す まさか、と思い動揺していたら察したのか「そのまさかだ、早く」
信じられないと思いながら彼の首筋を噛んだ
そしてもう一度ペンダントのボタンを押した
しつこい噂好きの叔母様方の餌食になりたくない一心だったのに…こんな事になるとは…

私たちは小屋の窓のふちに運良くたどり着いた きっとここは過去なのだろう
窓を2回ノックしたら老婆が窓を開けた

恐らくここはこの子の寝室だろう ガブリエル…
天使になる前のガブリエル 高熱に魘されているから私には気づいていない、気づかれたら私は消失してしまう… だけど私は
「おばさま、ガブリエルの様子はどう?」と尋ねた
老婆はそれに対して「この子いつまで経ってもバカなのよ 足し算すらできないの」
と答える
ガブリエルが熱で苦しんでいることに対して彼女は何も言わなかった
だが、まるで私と初対面ではないような口ぶりで話すものだから違和感を覚えた
「ねえおばさま、どうして私にそんな風に話すの?」と尋ねると「お前もガブリエルじゃないか」そう答えた

その返事を聞いた黒髪の男は満足げに肩を震わせながらクスクスと笑う 
「やっぱりそうじゃないか」と
私はこの名前もわからない男と今後数百年の旅をしなければならないことをその笑顔を見て確信し絶望した

だがその男が言うには「そのペンダント自体ガブリエルでなければ使えないのだからしばらくは付き合ってもらうぞ」と ああ、私の人生この男のせいでめちゃくちゃだ 周りの人間の記憶まで改ざんできるものだから私はなすすべがないから諦めるしかないのだ

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