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仮面ライダーBLACKSUN 新宿展示会体験レポート ヒーローの展示会を見に行ったら...そこにいたのは〇〇にとっての悪であった。

新宿駅。それは、乗降客数が世界一多い駅であり、日本の駅の知名度でも最上位に位置する駅である。そんなお馴染みの新宿駅で、なにやら聞きなれないイベントが開催されるという。10月末配信予定の新作ドラマ「仮面ライダーBLACKSUN」の撮影で使用された衣装やバイクの展示会が10月21~27日限定で行われるようだ。しかも、入場料等は無料である。

「ほう…興味あるね。」

私は見に行くことにした。そもそも筆者にとっては、仮面ライダー、及びヒーロー番組はなじみの深いジャンルだ。派手な蛍光色、洗練されたフォルム、近代のCGにより磨かれた必殺技の数々。子供の声援を受け、今日も主人公は平和のために果敢に戦うのだ。
昔は日曜日のテレビ放送はもちろん、劇場版には初日に足を運び、外伝作品は特別上映を行っている場所までわざわざ赴いた程である。最近では昔のように全てのエピソードを網羅することは出来ていないが、それでも変わった新作などがあれば視聴したいという熱意は消えていない。
この変わった新作こそがBLACKSUNだ。本作はR18+という過激な表現規制で一時期話題を呼び、筆者も大変驚いた。だが、筆者の知りえる範囲はそこまで。「子供向けとして知られたジャンルで、なぜここまで攻めているのか?」という理由については何も知らないのである。その答えを探るべく、今回は取材に訪れた私であったが….

これが…正義の味方!?怪人じゃん!!

というワケで、会場に到着。場所は新宿駅のホーム内の一角。期間限定というだけあり、広さはあまり大きな規模ではない。早速目に映ったのは、本作の主人公、仮面ライダーBLACKSUNその人と彼の愛車バトルホッパー。

 特設ブース。やはり目玉はライダーとバイクであり、撮影者も多かった。



いきなり本命のお出ましである。人は多いが、これは近くで見ないわけにはいかないだろう。まずはライダーからだ。他の人に失礼が無いように、注意を払いながら目の前で見たその詳しい姿は…!?

仮面ライダーBlacksun 間近で見た時最初に与えられた印象は、強すぎる威圧感であった。

「怖ッ!!」

そこに映っていたのは、来場者に向け禍々しい威圧感を放つ黒き戦士であった。変身ベルト、口部、腕と複眼横のオレンジ線以外は全て黒塗り。ヘルメットも眼も黒で塗りつぶされ、口はシルバーだがその造形は昆虫のようなギザギザの歯が並んでいる。腕には相手を傷つけるためのトゲが並んでおり、導体と足に至ってはただの黒塗りの鎧。変身ベルトすらその見た目は基盤も管もむき出しであり、もはや玩具化等眼中にないといった見た目だ。工場の部品の方がまだ近いかもしれない。主人公の見た目か...!?これが..!?

ちなみに、彼を後ろから取った写真はこちらだ。

仮面ライダーBlackSun、後ろ姿。それは怪人の背中なんよ。

「これ敵だ!」

おわかりいただけただろうか。黒。そう、上から下、左から右まで、全てゴツゴツとした黒塗りの鎧である。装飾やマークなど一切何も存在しない。
何一つ世間一般のヒーローの後ろ姿と一致しないのだ。当作品を全く知らない特撮初心者が始めて見た場合、間違いなく敵側の登場人物と判断することは間違いないであろう。
私は唖然としていた。流石に作品の存在を知っている以上、ポスター等で顔の一部程度は見たことがある。確かに黒いマスクが描かれており、そこに子供向けヒーローの華美な造形は存在しなかった。
しかし、まさか実物を見にいった結果、お出しされるものがヒーローの一般像皆無である、全身黒塗りの戦士だとは想像もしていなかったのだ。
何より想像してみてほしい、貴方が夜道の路地裏を歩いている時、急に写真のような全身黒塗りの鎧を着た男が現れたら、どう感じるであろうか?
一般人はまず真っ先に悲鳴をあげて逃げ出すはずだ。間違っても、「助けてヒーロー!」と安心して駆け寄る人はいない。なにより私でも逃げる。襲われたら怖いよ!

バイクすらも華はなし

さて、本人の次はバイクである。仮面ライダーといえば、やはりバイクは欠かせない。初代からドライブを除き主役はバイクに乗るわけだが、やはりその造形は整った物が常識だ。車種はレーサーからモタードまで幅広くあるが、車体の外部はきれいなカウルに覆われている。ハンドルには計器を揃え、そして必ず一つは、トレードマークたる派手な衣装や装飾がつくものだ。
こうして、誰が見ても、かっこいいと感じる仮面ライダーのバイクは、時代を問わずブランドの象徴であり続けた。
その中で、BLACKSUNの乗るバイクの姿はというと….

バトルホッパー、前面。タイヤの色がその古さを物語る。

古ッ!!!

はい、やはり普通ではございませんでした。ここまでくると、もはや古いを通り越し、クラシックバイクにしか見えないのである。
確かにアッパーカウル等は存在し、タンクとも色は統一されている。

バトルホッパー、排気管。まさかのテープ補修。これでも主役の乗り物です。


しかし、タイヤは色褪せ、配管は錆び付き、マフラーに至ってはテープ補修で無理矢理形を保っている。

バトルホッパー計器類。設置位置はまさかのタンク。


計器類の位置すら、一般がハンドルバー周辺に対し、こちらはタコメーター付近という見慣れない位置に設置されている。少なくとも筆者は人生で初めて見た。こんな形が存在するのか。

バトルホッパー全体像。この古さが良い!という方もいるのだろうか。

改めて全体像を撮影したが、やはりその見た目は到底令和の新作に登場する主人公のバイクではない。地元の気前のいいおじさんが店長を務める小型バイク店の中古車の方がまだ納得していただけるレベルである。仮面ライダーになるのも楽じゃないんだな…


仮面ライダーは怪人にとっての悪なのだ。

さて、以上が本展示会のレポートである。その他の展示物としては服やポスター等が張られており、上部ではPVが放映されていた。
今回の取材を踏まえもう一度PVを見返した所、注目すべきはシナリオである。本作は、怪人が人類に差別される世界。そして、怪人の権利の為に争いが起こる…という話であるのだが、本作は怪人側の描写がこれでもかと多い。ご丁寧に怪人代表の演説シーンまで用意されているほどだ。製作者側は、怪人視点で人類がどう見えるか描きたいのである。
だがしかし、仮面ライダーBLACKSUNは人類の味方である。当然、人類に手出しした怪人に対しては容赦なく命を狙いに来るのだ。事情はどうあれ、過ちを犯せば最期。黒塗りの鎧の戦士が目の前に現れ、哀れにも怪人は力で土へと返されるのである。場合によっては彼を見た=死刑宣告となる。
これらを踏まえて筆者にはある一つの考えが浮かんだ。仮面ライダーは人類にとって正義だ。しかし…

本作のポスター。黒塗りの背景が示すように、相当重い作品のようだ。

怪人にとっては悪の化身では!?

そう。本作のキャッチコピー、「悪とは、なんだ。」これは何も、怪人だけに向けた言葉ではない。作中で差別を受ける怪人達にとっては、人類こそが悪であり、人類の為に戦うBLACKSUNもまた敵になってしまうのだ。
つまり、怪人から見た物語である本作において、仮面ライダーは華々しい皆のヒーローではない。理不尽に耐え、明日の恐怖から逃れるために今日をもがく怪人達。彼らにとって、仮面ライダーは最後に残った自身の命を消しに来る、恐怖の象徴だ。
それであれば、本作の仮面ライダーがこれほどまでに禍々しい造形なのも納得の出来であろう。製作者は、視聴者に対して、怪人がライダーに抱く恐怖を理解することを望むのだ。目の前で変身した時、我々には「頑張れェー!」と応援するのでなく、「あっ、出てきてしまった…終わった…」と恐怖してもらいたい。それを実現する姿が、黒塗りの鎧であり、トゲであり、黒き複眼なのである。
筆者自身、ヒーロー番組でこのような結論に達したことに驚いている。しかし言い換えれば、本作はそれだけ前例のない切り口に挑戦している作品ということになる。であれば、一度はその挑戦の行く末を見届けるのがファンというものではないか。仮面ライダーBLACKSUNは10月28日、AmazonPrimeVideoにて公開される。是非、その全貌を見届けよう。
ああ、夜道で黒い影が出てきたら気を付けなければならないな….


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