黄門ちゃいまの世直し旅/第21話[母の叫び]
ナレーター/一同は、楽しく拝観を終え帰路に向かって歩き出した。公園を出てしばらく歩き出した時、横をすり抜けた自転車が居たかと思えば、キャーっと悲鳴が、いったい何が起こったのか……
ナレーター/すると後ろから女性の声で、ドロボー、っと叫ぶ声が、それを聞いた助さんが思わず、瞬足を活かして自転車を追いかけ、10m付近で走る自転車の荷台へ手をグッと伸ばし、それはまるでオリンピックのリレー選手がバトンを渡すかのように、右手を振り上げ向けた瞬間の出来事だった。キュッと自転車が停止、自転車に乗った少年は[離せやコラーっと]大声。
助さんすかさず、少年の腕を掴んだかと思えば、腕ごと少年の背中にすっと回転させ、それはまるで合気道の達人がかける技のように、一瞬の出来事だった。
少年/痛いだろー何すんねん
ナレーター/それはこっちのセリフっと、突っ込みたくなると思うのは私だけでしょうか…
ナレーター/少年を取り押さえながら…
助さんが御老公に申しました。「ご隠居、こやつの御裁き、いかように致しましょうか」
ご隠居/そうですな、何か事情でもあったのやも知れぬ事、こうして無事に入れ物が帰って来た事もあり、どうですかな、ここは許してあげましょうかな
助さん/はい
ナレーター/そこで何を思ったのか…「母が待って下さいご隠居さん、ダメなんです、許してはダメなんです」…
思わず母に顔を向ける、御老公と助さん格さん…
ナレーター/母は瞳に涙を溜めながら、御老公にお願いを……
御老公/そうでしたか、母殿…頭を上げて下さ
れ、私としたことが、恥ずかしい限り
です。今の世がこれほど精神的に病ん
でしまっている事、深く深く私の心に
刻まれました。お礼を申しますぞ…母
上殿…
ナレーター/御老公の瞳にも、感涙の涙なのか、
瞳が滲(にじ)んで見えまする…
母/ご隠居さん、ありがとう……
ナレーター/母は言葉をつまらせた…
御老公/いえいえ、私くしの方こそ…
ナレーター/これを見ていた、少年は何か感じたようなのか大人しくなった……
御老公は少年に対して…「分かっておるな…」とひと言、少年は何も言わず、ゆっくりと「うなずく」
ナレーター/近くで見ていた、被害女性は一部始終のこの光景に、ただその場で佇むばかりでしたが、ようやく我に戻ったようで…
被害女性/ほんとにありがとうございます、どのようにお礼すれば良いのやら、助かりました。
バッグの中には…[目をうるませ]
この1ヶ月の給料が入っていたので、ほんとに家族の事を思うと…
母/ほんとに無事で良かったです~、私も助けになる事が出来て嬉しいです
ご隠居/そうですな、無事がなによりですな…
被害女性/あの…お礼をしたいのですが
ナレーター/それを聞いた、母とご隠居、助さんは間髪入れず、
同時に…
お礼など要りません(母)
お礼など要らぬこと(助さん)
お礼にも及ばぬこと…(御老公)
3人同時に顔を見合わせ、誰ともなく笑いが…そして格さんも天二郎もそれにつられて笑いだし…続いて被害女性も申し訳無さそうに笑い初めました。
ご隠居/良かったの~、良かったの~、
ハッハッハッハッハッハー
ナレーター/とんだ波乱の帰り道であった。
一同は加害少年を無事交番へ送り届け、帰宅の途についた。
母/さぁ〜皆さん疲れたでしょう~、お風呂に入りましょう…
ナレーター/母はいつにも増して、元気よく明るい、チャーミングな母であった。
続く……
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