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兄の餃子

 「今まで口にした餃子の中で、一番おいしかったものは?」と聞かれて思い出すのは、兄(当時中学生)がつくってくれた餃子だ。

 ある日の晩ごはん。
 今日は餃子をつくろうと、母とわたし(当時小学生)が食卓に材料を広げていたとき。
 兄がひょっこり自室から顔を出し、「今日はおれがつくる」という。
 ちなみに、ふだんは料理など一切しない兄である。
 まさかの発言に母とふたりで目を見合わせるも、兄のつくる餃子をたのしみに待った。

 後ろから様子を見ていると、初心者ということもあってか、兄は調味料の何ミリリットルとか何グラムとかを、きっちりと計測していた。
 そして、包む前に、皮の枚数分に餡を均等分していた。
 しかも、皮のヒダも均等間隔でつけていた。

 丁寧なつくり方をしているから時間はかかったけれど、その間に父も会社から帰ってきて、家族みんなで焼き立ての餃子を頬張った。それはわたしのつくる餃子よりおいしいのはもちろん、毎日料理をしている母のつくる餃子より正直おいしかった。

 大人になってからは、いろいろなお店で餃子を食べてきたけれど、わたしにとって一番の味は、今でもあの日に兄がつくってくれた餃子である。


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