短編:袋小路
俺はどこにも行けない。ここが一番まともな選択肢だった。何かが追いかけてくる。俺は何もわからず逃げた。逃げ続けて、逃げ続けて、この古い炭鉱の袋小路まで来たのだ。俺の住んでいた地域はかつての炭鉱町で、地下には縦横無尽に坑道が抜けている。俺は入口が中途半端に閉鎖されていた一つの坑道に入り込んでしまったのだ。
何が追いかけてくるのだろう。俺にはそれすらわからなかった。もしかすると、俺の中に眠る大昔の遺伝子が誤作動して何もないところに命の危機を感じているのかもしれない。中空に浮かぶ、いや浮かんでさえいない、無。虚無、俺はそれを恐れている。きっとそうだ。だが、そうだとしても俺はこうして逃げることしかできない。狂人のように。いや、狂人そのものだ。俺は狂ったのだろう。何に追いかけられているかわからずに、こんな危険な場所へ…意味が何一つ通っていない。だとしても、決して俺には戻ることができなかった。俺の命が動くなと命令していた。全身が、魂が。
ああ、俺はきっとここで死ぬ。もういいんだ。
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