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感想文『パリは燃えているか〜シンドラーズ・リスト〜1.200人のユダヤ人を救ったドイツ人〜より』


《前書き》
わたしは現在、読書が殆ど出来ません。なので、昔読んだ原作本に忠実に沿った映画で知った事実を、自分なりの感想文として書かせて頂こうと思いました。ただ、わたしは読解力も低く、学生時代から《読書感想文》が、苦手なため、この選書の、本には相応ふさわしくない稚拙な文になっていると思いますが、わたしなりに解釈し感じたままに書きました。皆様に、ご一読して頂けると幸いです。

※また、戦争関連の記事に苦手意識のある方は、この先の感想文は読むのをお避け下さい。


新潮社出版
トマス・キニーリー著
幾野 宏訳
『シンドラーズ・リスト〜1.200人のユダヤ人を救ったドイツ人〜』


 この音楽を聴くと、ああ、また母が『映像の世紀』を見ているのかと、察しがつくほど、重厚な旋律が聞こえてくる。それが、NHKの番組『映像の世紀』のテーマ曲、
《パリは燃えているか?》
である。
わたしはこの映像作品から、『シンドラーズ・リスト』という、厚みのある一冊の文庫本に出会った。
その一冊には、第二次世界大戦のナチス・ドイツの、悲惨なユダヤ人の迫害が刻々と記されている。当時のドイツ軍総統アドルフ・ヒトラーを先陣に行われた、ドイツ選民主義思想と、全体主義の恐怖、そして、ヒトラーが行った、世界人類最も最悪な、ユダヤ人の強制収容所の過酷な労働、ガス室によるユダヤ人殺害…弱者や、抗ったユダヤ人には即銃殺。
 シンドラーは元はドイツ寄りの人間だった。同じドイツ軍人が、目の前でユダヤ人を銃殺する姿を見ても、周囲と同じで愉しげに笑って眺めていられるような人間だった。
最低な人間だ。
だが、彼はやり過ぎた軍の行動に、疑問を抱くひとりの経営者ビジネスマンでもあった。ドイツ軍に歯向かえば、例え同じドイツ人であろうとも、見逃してはくれない。監視社会の恐ろしさを、シンドラーは知っていたからだ。表向はエナメル質の調理器具で財を成した男だ。
だが、政権を握るドイツ軍の過度な体制に、胸の内ではムカムカとした感情が日増しに強く、イライラとした心の晴れない日々が続いていた。
そして、ユダヤ人迫害の余りの残忍さに、シンドラーの胸中に渦巻いていた反抗心が爆発する。
シンドラーはドイツ軍に悟られないように、密かに賄賂わいろを渡しながら、表向はユダヤ人を『モノ』として、買い入れ自分の会社で、働かせ、食事を与え、寝床を用意し、一人でも多くのユダヤ人をかくまい始めた。
印象的だったのは、死の強制収容所”アウシュビッツ“へと、向かう家畜用運搬列車に乗せられたユダヤ人に、シンドラーがその場に置いてあった、水溜め用具で、列車内の熱に喘ぎ苦しむ彼らに向けて、ホースから水を放つのである。ドイツ軍人はシンドラーが、一見、ユダヤ人を馬鹿にして、見世物のように水を放っているのだと誤認して嘲笑するが、シンドラーはアウシュビッツ収容所に向かう彼らに、せめて少しでも良いからと、冷たい水を浴びせていたのである。
ドイツ軍とユダヤ人、双方の狭間はざまで、揺れていた人権擁護じんけんようごの、スイッチがドイツ軍からユダヤ人へ切り替わった瞬間でもある。
ある人物を紹介したい。
ナチス・ドイツの軍人将校、アーモン・ゲート。
強制収容所の監視人、退屈極まりない役職に就いた彼は、贅沢三昧の私邸のテラスから一望できる、収容所の広場に向かい、自分の眼中に止まったユダヤ人を射殺するのである。死んだユダヤ人は、栄養不足の食事と労働に酷使され、ほんの少し足を休めただけだった。それが、何メートルも離れている高台の、屋敷のテラスから撃ち殺された。なんとも、目に余る悲劇である。
もう一人、名前も知らないユダヤ人の中年女性。彼女は、ドイツ軍人による、収容所で働けるか否か…命の選別が待っていた。働けると判断されれば、収容所での仕事が与えられる。だが、否と判断されれば、ガス室送りだ。彼女は、生命力に溢れ、なんとしてでも生き残るために、身体を傷つけ、滲み出た鮮血を、己の唇に朱い紅、頬に、淡い朱の頬紅風に塗る。自分の顔を見れば、働ける健康体だと判断される。そう一縷いちるの望みを託し、表情も明るく、穏やかな女性像を演じてみる。人間、皆誰もが『死』が、怖いのだ。
ドイツ帝国を謳い、戦争でヒトラーがもたらした勝利は、繁栄を極めるが、ロシア侵攻の惨敗により、遂には連合軍に負ける。
そして、多くのドイツ軍人の将校たちが死刑にされていく中、ヒトラーは隠れ家で、愛人と共に、銃で自殺を図る。
連合軍の手は、勿論、表面上ドイツ軍寄りであった、シンドラーの身にも迫る。一度築き上げた財産は、既に破産しており、ドイツの敗戦とともに戦争は終結を迎えるが、シンドラーはドイツ寄りの手配者。車で、工場を後にする時、一人の老いたユダヤ人男性から、口の中に隠していた金歯を受け取り、工場で働いていた沢山のユダヤ人従業員に見守られ、去っていく。

 経営者ビジネスマンとして成功し、多くの富を得て、ドイツ軍達に賄賂わいろを渡し続け、旨い酒を飲み、ドイツ女性等と戯れ、その時代に極上の暮らしが待っていたであろう彼の人生に、何が彼の心を変えたのか…あの、真夏の日照りの中、家畜用運搬列車に無理やり乗せられ、アウシュビッツ強制収容所に運ばれようとしている、耳をつんざくような、ユダヤ人たちの断末魔にも似た悲鳴に、自分という“1人の人間”としての、生涯をかけた使命に、覚醒したのかもしれない。


『シンドラーズ・リスト〜1.200人のユダヤ人を救ったドイツ人〜』は、世界的に有名な作品であるが故に、noteのクリエイターの皆様にも、お詳しい方が沢山おられると思います。
わたしは、まだ、20代のときには『映像の世紀』を見ることが…直視することが出来ませんでした。それが、30代に入ったとき、『独裁者・アドルフ・ヒトラーという』を紹介した『映像の世紀』を観て、怖いと心の中でおののきながらも、目が釘付けになりました。ナチス・ドイツの、とても人間の所業には思えない、地獄絵を見ているような感覚でした。
今、世界はオスカー・シンドラーの、生きた時代の政治に酷似した、恐怖政治、監視社会、全体主義、独裁国家が、蔓延り存在しています。
その闇の中で、自分は他所よそから見れば『なんてひどい国。国民が可哀想』と、思われて当然の犠牲者が、なんの不審も抱くことなく、普通に暮らしている。全て、生まれた時から、子供のマインドコントロールは始まっているのです。
わたしは、この本を読み、人間の《狂気》ほど、恐ろしいものは無いと思いました。
闇は狂気を生みます。わたし達人間は、その狂気に抗うことなく、これが当たり前なのだと信じてしまう。
だから、わたし達は何事に対しても、『本当にこれで良いのか?』という、選択肢を、ひとつ選ぶ前に一歩下がって、客観的に見ることが出来れば、正しい結果が待っていると思います。

ご拝読有難うございました。


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