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20代の心残り②

心理学を専攻した人であれば分かると思うが、学習心理学、行動分析学はとにかくデータばかり出てくる。おおよそ多くの人が想像する心理学とは大きく違い、対象が人間ですらない場合も多い。(鳩やラットでデータ収集していることが多い)
ゼミの人気がないわけである。

退屈に思いながらも、書籍や論文を読んでいた時に出会った論文が、自閉症の早期高密度療法の論文である。
イヴァ・ロヴァス博士が年少の自閉症児にABAの理論を基に作成したプログラムを行ったところ、最良の効果が得られた実験群(全体の約45%)でIQが大幅に上昇したと言うのである。

それまで大学の授業では発達遅滞児のIQが健常児の発達に追い付くことはなく、環境調整でよりよく生活を営めるようにする、と習っていた。(後にSTの専門学校でも同じことを学んだ)

その常識とはかけ離れたデータが論文には示されていた。

この論文を読んだあと、関連の論文や書籍を読み漁るようになった。そしてDTTや言語行動の理論に基づくVBのプログラムなど、調べれば調べるほど子どもたちを進歩させる、様々な方法があることを知った。

発達障害児は機能的な改善が見込めず、生涯に渡って介護や支援が必要だとというのは間違いだと思った。
いつしか私はABAを生かして子供たちの可能性を引き出す仕事がしたいと思うようになった。

③へつづく

※文章中で「治療」と表現しているが、現在の表現では「療育」や「教育」が適切な表現と思われる。当時、読んだ書籍や論文の表現をそのまま用いているので、ご了承頂きたい。

※ABAは1960年代頃から多くの論文が発表され、多くの子どもたちを進歩させる可能性が示されているが決して万能な方法ではない。
当時、開発されていた様々な方法を詰め込んだ早期高密度療法でも実験群は3群に別れており、高密度療法では全く進歩しなかった子どもたちがいたことを報告している。また、1987年の早期高密度療法のプロトコルは嫌悪刺激を用いており、批判を浴びた(現在は嫌悪刺激を用いない方法がとられている)。

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