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30年と30日とたった3日。-『三日間の幸福』を読んで-

 こんにちは。こんばんは。

 なつめぐです。

 今回は最近読んでいた本紹介します! 

三秋縋 / 三日間の幸福

 この作品、友達にオススメされて買ってみたんですけど、めっちゃ素敵なお話すぎてもっといろんな人にオススメしたくなりまして。

 是非気になる方、最後までお付き合いください。

 ※ネタバレを含みます。

三秋縋『三日間の幸福』

あらすじ

 自分は他の人間より価値のある人間だ。そんなことを思いながら日々を無価値に生きる男子大学生(クスノキ)が主人公の話である。

 クスノキは、30年の寿命を30万で売り払った。クスノキに残された寿命は3ヶ月程度。その日から監視員としてミヤギという女が見張りとしてクスノキの部屋にくる。最初は馬の合わない2人だったが、次第に仲を深めていく。1ヶ月が経とうとする頃にはすっかりお互いに好意をもつほどになる。そんなある日クスノキの30年の寿命はたった30円で、ミヤギが嘘をついて30万をくれていたと知る。そして、そんなミヤギに恩を返したいと、ミヤギの持つ膨大な借金をどうにか残り2ヶ月で返せないかと考えるようになる。結果、残り寿命が1ヶ月程度となったクスノキはミヤギの休暇中に3日だけを残し、後の30日を売り払う。そして、最後の3日は監視員がつかないことで、1人過ごすようになるがミヤギが恋しくなり、公園で座り込んでいるクスノキの元へミヤギがやってきて、ミヤギも残りの寿命を全て売ってクスノキの元へとやってきた、と言う。そして、2人は残りの3日間を幸せに過ごしたのだろう。

 うまく要約できていないが、そこはご容赦頂きたい……。

感想

 この作品読みながら、クスノキは残りの寿命で何かを成功させて、有名人になりミヤギの借金を返すのかなとか思ってました。でも、まさかこんな形で裏切られるとは…。

 あちこちに伏線は張り巡らされてたんだろうなって思うし、このタイトル『三日間の幸福』これが全部物語ってるのかなって思った。

「三十年で何一つ成し遂げられないような人が、たった三ヶ月で何を変えられるっていうんですか?」

 ここの部分、ミヤギが主人公を突き放して言うセリフ。ここ結構印象強く残ってるんですよね。

 キツい言葉だけど、それが正論で、でも、それでも抗おうとする。そんなクスノキの姿に、この男は残りの3ヶ月どう使うのか、つい深読みしたくなってしまう。そこが私にとってとても面白い。

 私、本読む時よく、この後どうなるか、どんな結末を迎えるのか、って想像しながら読むんですけど、やっぱ予想が外れる方が好きなんですよね。新鮮な驚きとかそうきたかぁって思うこととかそういうのがすごい楽しい。

 だからこそ、この作品はめちゃくちゃ私に刺さったのかな、とも思うんです。

 最後、特に何かを成し遂げることもなく、ただ自分にとっての幸せを育んでいく。それがクスノキの人生をガラリと変えたんだって思うと、幸せってずっと近くにあって自分で掴み取っていくものなんだなって感じました。

多分、その三日間は、
俺が送るはずだった悲惨な三十年間よりも、
俺が送るはずだった有意義な三十日よりも、
もっともっと、価値のあるものになるのだろう。

 これ、この作品の締めくくりの一文なんです。この作品の中で私が1番好きな部分。

 幸せは時間じゃなくて、気持ちなんだって思えるんですよね。当たり前かもしれないけど、こうやって文字で、物語で見ると改めて実感するような気持ちになるんです。

 幸せって堅苦しく考えなくても、近くにそっと寄り添っているのかもしれないなって思ったら、些細な出来事にも幸せを感じられる気がしてくるんですよね。

 そんなことを考えさせてくれる作品だなって思いました。

 それでは、またいつか。


書誌情報

著者名:三秋縋
タイトル:三日間の幸福
出版社:KADOKAWA(メディアワークス文庫)
出版年:2013年(初版)

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