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あなたにとっての突風とは何ですか? -『この気持ちをいつか忘れる』を読んで-

 こんにちは。こんばんは。

 なつめぐです。

 今回は私の好きな本を紹介したいと思います。

 私の好きな本は、
住野よる『この気持ちもいつか忘れる』
という恋愛小説です。

 この作品は、住野よるにとって初の恋愛長篇で2020年にハードカバーの単行本という形で新潮社から刊行され、今年7月には文庫版が刊行されています。

 また、この作品においての面白いポイントのひとつ、ロックバンド「THE BACK HORN」とのコラボから誕生したという点です。本と音楽が融合した作品、それが『この気持ちもいつか忘れる』という作品なのです。

※ネタバレを含みます。

住野よる『この気持ちもいつか忘れる』

あらすじ

 毎日を退屈に過ごす男子高校生・カヤは、16歳の誕生日に謎の少女・チカと出会う。目と爪だけが光って見える彼女は、異世界の住人らしいと知る。なぜ2人は出会ったのか、2つの世界で共通するものがあるかもしれない、というようにカヤはチカとの出会いを重ねるうちに段々とチカに惹かれていく。そして、チカの誕生日、小さな衝突をきっかけにチカと会えなくなってしまう。

 それから月日が流れて、カヤは社会人となり、仕事先で高校の頃の同級生・紗苗と出会う。2人はプライベートでも会うようになり、交際を始める。しかし、高校の頃と変わらないカヤとガラリと変わった紗苗では、価値観や考え方が合わず一度は別れてしまう。だが、この時の喧嘩をきっかけにカヤの中で今でも好きだと思っていたチカが今では過去の人物であり、好きだということも過去のことであると気づく。そして、再び紗苗と衝突していく上でカヤは自分と向き合い、自分の感情や日々を素直に受け入れられるようになる。

感想

 この作品を読んで私は、人の感情というのは本当に複雑で単純なものなのだと感じました。感情はいつでも単純であるはずなのに、自分自身の価値観や考え方によって複雑になっていってしまう… そんなことが書かれている作品であると感じました。

 そして、もうひとつ人生の突風について興味を持ちました。理由としては、大きく言うとこの作品が恋愛小説だからです。なんとなく、恋愛小説というと、キュン描写や二人の関係性に着目されることが多いと思います。
 私は恋愛小説を読むことが多いので、ついそこに着目してしまうが、この作品では、もちろんその点にも目を惹かれる描写が多いのですが、カヤにとって恋愛を人生の突風と表現しているのがとても印象的でした。

 次の文は、社会人となったカヤが描かれている第二章の最初の部分です。

「どうやらこの生涯っていうのは、楽しいとかつまらないとか、そういった強い感情を持つほどのものではない。一時の突風にも例えられる感情を抱くことはあるが、すぐに風は去り、残りの時間はその風の記憶をありがたがって生きる余生に過ぎない。」

 これが、人生の突風ということが頭に残っている要因のひとつとなった内容です。

 私はなぜこの部分が印象として残っているのか、考えてみても明確にこうだというものはないのだが、ふと自分に置き換えて考えてみたときに自分にとっての突風となるものはなんだろう、これから訪れるのだろうか、はたまたもう過ぎてしまったのかと考えました。
 こんなことを考えることは普通ならなかったのかなと思うと、そのことに面白みを感じました。また、他の恋愛小説とは違った面白さを兼ね備えるこの作品の魅力を多くの人に感じ取ってもらいたいと思い、紹介させていただきました。

 最後に、読む際は是非、本と音楽の融合をお楽しみください。本と音楽がリンクしてるのは、読んでいても聞いていてもとても楽しく感じられます。

それでは、またいつか。


書籍情報

著者名:住野よる
タイトル:この気持ちもいつか忘れる
出版社:新潮社
出版年:単行本 2020年(文庫版 2023年)

同作家作品おすすめ3選

・君の膵臓をたべたい(双葉社 2015年刊行)
・か「」く「」し「」ご「」と「(新潮社 2017年刊行)
・恋とそれとあと全部(文藝春秋 2023年刊行)

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