見出し画像

日本で好きな場所

海外に住んでいる日本人が、日本に帰ることを「一時帰国」と呼ぶ。「ああ、また私は “一時” 帰国して、しばらくしたら異国に “帰る” のかー」と思うと、なんだかいつも寂しくなるのだが、私だけか。

まあそれは別になんだって良いのだが、私には、一時帰国の時に、「やっぱり日本にいたい!」と心の底から思う瞬間がある。

それは、本屋にいる時。壁が、通路が、本で埋め尽くされていて、新作も名作も、どんな出版社の本でも手に入る。表紙も帯も、全部工夫されていて、とりあえず好きな作家のコーナーに行くべきか、それとも平積みされている新刊たちを手に取るべきか、右上から順番に見ていくべきか、興奮しすぎて決められない(結局目についたものから手に取っていく)。しかも、どの本も、日本語。個人的に、小説やエッセイは日本語のものの方が好きだ(おそらく、ただ単に私の英語力が足りていないだけ…)。

脳がその1年でなかったほど刺激され、一瞬で楽しい!と思えるから私は本屋が大好きだ。将来は、出版社で働こうかと思うくらい。決してお喋りが禁止されているわけではないのに、ガチャガチャしていない、あのなんとも言えない微妙な静けさも、大好きだ。だからこそ、本屋さんが年々減少しているというニュースを聞いた時、焦りといたたまれなさに苛まれた。

本屋にカフェが併設されていて、何冊か持ち込んで良いお店が増えてきたのに関しては、卒倒して目から鼻血が出そうなくらい嬉しかった。ただ、席が2時間制というのが、ゆっくりいろんな本が読めなくて残念(図書館に行け)。本屋存続のためには、私のような人間が本を率先して購入しなければならないとは分かっているものの、金がないのでどうしようもない。。大人になったら、買いまくる!

「日本から出たくないなあ」と呟きながら、毎度お馴染みの空港に立ち、チェックインをし、荷物検査をし、出国していく自分を少し嘲りながら、私の一時帰国はいつも幕を閉じるのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?