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ストレスと独り身とホテル暮らしとーセカンドシーズン【第5回・神奈川県箱根強羅《前編》】

 2022年4月25日の午前中。関東全域にもたらされた貴重な晴れ間。私はとあるローカル線の中に居た。コンパクトで綺麗な車内……窓から見えるのは無人駅の傍の神社や、落ちたら確実に死ぬ高さの鉄橋。高めの運賃を支払って到着した先はー

 東京の人間が毎日道路に渋滞を作りたくて仕方がない温泉地……箱根。その箱根登山鉄道の終点である強羅に降り立つ。
 標高541m。両脇から大自然が迫る箱根の山を縫うようにして走り、建設から100年以上経つ小さなトンネルをいくつも潜る。世界第2位の急勾配を誇るコアな鉄道である。

 昭和の残り香が漂う駅前の並び。新しくコンパクトで清潔感溢れる土産物屋も好きだが、古めかしく大雑把で不愛想な店員が立つ店も悪くない。

 駅のすぐ側に設置された『手湯』。チョロチョロと温泉が出しっ放し。そして、強羅の案内所の隣には、ここいら一帯に建つホテル・旅館の名前が彫られた竹がオブジェにされていた。で、それを眺めていた私のすぐ近くで交わされた老婆二人組のガチな会話ー

老婆A:「コレ、竹で作ってあるねえ」

老婆B:「あたし、電ノコ持ってるよ」

須藤マリ:(切る気なのッ!? ってかなんで持ってんだよッ!?)

 今回は利用しなかったが、強羅駅から短い距離のケーブルカーも稼働している。非常に重厚感のある立派な造りで、急な坂になっている強羅の温泉地を移動するのには便利。

 いつもの如く、まずは荷物を預けに行く。

本日の愛人『メルヴェール箱根強羅』である💕

 純和風空間の箱根にありながら、外見から洋風の雰囲気を醸し出している。

 近所の散策で常に視界に入ってくる箱根の山々。普段、都会の無機質な鉄筋コンクリートに囲まれて生活していると、無性に山や濃い緑に囲まれて癒されたくなる時がある。

 まずは昼食。強羅の温泉地一帯には、一般的に良く知られているチェーンの飲食店等は無い。故に、選択肢はカナリ限られる。明らかな個人経営の飲食店に突撃する覚悟が必要。
 むッ……『箱根山麓豚』? 初めての出会い。美食家の端くれとしては試さずにはいられん。
 かつ丼¥1350。温泉地価格とはいえ、かつ丼一杯にこの値段……おッ、旨い! 脂身と赤身の配分が丁度良く、不健康な豚にありがちなクセのある臭いが全くしない。箱根山麓豚、箱根に訪れた際には是非食べてほしい。

 昼食に利用した食堂のすぐ目の前には『強羅公園』が。高齢者が徘徊するとてものんびりした敷地。……やはり、入場料がかかるのか。

 実物を生で観覧したい方々は現地に行って観光業を潤してくれ。

 強羅公園に続く公園坂。坂の入り口に建つ土産物屋の軒先に、衣装ケースで飼われるデカイ亀。その名は『小林かめ子』、温泉地で20年以上もヌクヌクと育った文字通りの箱入り娘だ。

 そろそろ良い時間になったのでホテルのフロントへ。1階のフロント隅にはこぢんまりとした御土産販売スペースと、自由に選択できる様々な浴衣が用意されている。
 今回はじゃらんスペシャルウィークを利用し、最大30%offの特選会席プラン。忌々しい入湯税込みで¥15110。
 実はこの金額、安い。何故なら本日は月曜日なのだ。これが何を意味するのかー

 大抵の旅館・ホテルは平日月曜が一番安くなる。一般的社会人なら憂鬱に仕事を始める曜日なのに、いい大人が温泉地でヒャッハー! しているのには約1年にも及ぶ、勤め先とのしぶとい交渉があったからなのだ。結果、月曜・火曜を公休とするに至り、宿泊客が少ない落ち着いたホテルステイを最安でエンジョイできるようになったのだッ!!

 うむ……広い。これまではビジホのシングル客室ばかりだったせいもあり、有り余るスペースに感動してしまった。しかも、ベッドが2つに椅子3つに大きめのソファまで。
 リゾートホテルなら必ず設置されてる空気清浄機をオンにする。

 優しく仄かなランプの灯が気持ち良い。テレビは型が古く小さめで地上波しか映らない。

 十分なスペースの3点ユニットバス。全体的に経年劣化や欠損が目立つが……浴槽、デカっ! しかし、このホテルの地下1階に大浴場があるので使う機会は無い。トイレタリー一式はPOLA。

 さて、今宵はここまで。
 後編に続く。

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