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ランドルフ・コールデコットとコールデコット賞受賞作品について

 皆様はランドルフ・コールデコットという名前を聞いたことがありますか?もしかしたらコールデコットという名前よりもコールデコット賞に輝いた絵本、例えばヴァージニア・リー・バートンの「ちいさいおうち」やモーリス・センダックの「かいじゅうたちのいるところ」などの絵本を読んだことがあるかもしれませんね。
 今日は1846年に英国で生まれたランドルフ・コールデコットがどうしてアメリカ図書館協会の「前年中に合衆国で出版された、こどものためのもっともすぐれた絵本画家に与えられる賞」としてコールデコットの名前が命名されたのかを探っていきたいと思います。

ランドルフ・コールデコットの生涯
 

 ランドルフは洋服生地を商い注文で帽子やスーツなどを仕立てていた父ジョン・コールデコットと妻のメアリー・ダイナーの間に1846年に誕生しました。1846年にといえば日本では江戸時代末期、黒船が浦賀に現れたそんな時代でした。
 ランドルフは子供の時にリウマチ熱にかかりこの病気がもとで一生弱い心臓を抱えることになりました。しかし病気のおかげでなんでも前向きの態度をとり、ランドルフは闘病中に絵を描き始め木彫りや粘土細工の動物を6歳から作り始め、また動物の絵を好んで描き始めたのです。ランドルフの優れた点はインスピレーションでいつでもどこでも逃さない才能の持ち主だったといわれています。ランドルフは学校にあまり興味をもたなく1861年には退学し15歳で銀行勤めをし自活を始めました。健康に対する不安は抱えていましたが人目を惹く美貌と快活な性格で常に多くの友人や女性を引き付けていたようです。ランドルフの絵が初めて売れたのはホテルの火災を描いた絵で15歳の時でした。ランドルフはニュースとなる事件をどんどんスケッチしたのです。1872年2枚の絵が売れ、銀行員をやめて絵描きとして生きる決心をします。そこには当時イギリス一といわれていた彫版師ジェームズ・クーパーやエドマンド・エバンスとの出会いがあったのです。
 1800年後半当時のイギリスの印刷技術は版木に彫っていたのですね。浮世絵と同じ感じなのです。ですから作家にとって良い彫師と組むことはとても大切でありまた彫師にとってもよいイラストレーターと組むことが必要だったのです。クーパーはランドルフにアメリカの作家ワシントン・アービングの休暇の物語「昔のクリスマス」の作品のイラストを120枚描かせ約1年かけて彫り、作品は大成功を収めました。そして彫版師エドマンド・エバンスはモノクロ―ムからカラーに変えた人物といわれています。エバンスはランドルフの絵本に赤・ブルー・黄・ピンク・茶・グレーの6色を使いました。コールデコットの絵本の歴史は印刷技術の発展とも関連してきます。そしてコールデコットは質の良い本の出版が求められた時代に、読んで楽しい本であると同時に見て楽しい本を作ることにエバンスと組むことで生かされたのです。またエバンスとランドルフはこどものために高品質の絵本シリーズの出版を実現したのです。コールデコットの絵本は美しいだけでなくユニークで絵本の楽しさとも結びついて絵ばかりでなく人生そのものに向かって進む道も優しく穏やかに語りかけられていることがのちのアメリカ図書館協会の「前年中に合衆国で出版されたもっともすぐれた絵本の画家に与えられる賞」としてランドルフ・コールデコットの名前が選ばれた所以です。

コールデコット賞の絵本


 1938年以来毎年1人がコールデコット賞を授与されてきています。先に挙げた「ちいさいおうち」ヴァージニア・リーバートン作は1943年受賞。その作品は色遣いがあざやかで絵を見るだけでも楽しませてくれますが、絵本の見返しには「ちいさいおうち」の時間経過がわかるように描かれており、子供たちに時間の観念を具体的にわかりやすく教える試みがなされています。
 「かいじゅうたちのいるところ」モーリス・センダック作は1964年受賞作品です。不気味でちょっと怖いかいじゅうたちはかわいらしい絵本ではできないワイルドな役割を子供たちに提供しています。絵本はめくっていくと絵がどんどん広がっていきファンタジーの世界を存分に楽しませてくれます。何より子供たちの心が解放される絵本です。
「3びきのぶたたち」デヴィッド・ウイーズナー作は2002年受賞。3匹のこぶたの懐かしいストーリーをイメージして本を開いてみればいったい何が起きているの?字も絵も決まりなど破って奇想天外、絵本の常識を破ってしまうような作品です。
 コールデコット賞の絵本は子供たちだけでなく大人でもわくわく命のきらめき、喜び、楽しさをわたくしたちに享受してくれています。
 次回はコールデコット賞を複数回受賞した作家の作品に焦点を当てご紹介したいと思います。

 


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