チャップリンの大道芸

土曜日にロンドン中心部に出た折に、ちょっと足を伸ばしてコベント・ガーデンまで出かけた。コロナ明けで夏休みの終わりという、ロンドンに着いた時期が悪いのか、ロンドンのあまりの人の多さに辟易していたところなので、市場という人が集まるところは懲り懲りだとは思ったのだが、最後にコベント・ガーデンに寄った時と何が変わったか、変わらないかが気になって。

お店はあまり変わっていないのではないかな。ではそろそろ帰ろうと思った時、何か聞き覚えのある懐かしいメロディが耳に入ってきた。その音楽に誘われて近づいてみると——。

芸を観るのに夢中で写真は上手く撮れなかったです。興味のある方は、YouTubeでChaplin Covent Gardenの検索で見つかると思います。ぜひ!

チャールズ・チャップリンの大道芸だー!チャップリン芸をやる芸人さんは世界中にいるだろうし、昔のテレビなどでも観たこともあるけれど、この芸人さんは格別だ。一瞬でこの方のパフォーマンスに惹きつけられた。動きの一つ一つ、詳細に至るまでチャーリーでないの!

これはチャップリンへの愛に溢れている。すごい。
コピー芸といえば数年前、映画「ボヘミアン・ラプソディ」でクィーンのフレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレックにも息を呑んだけれど、今、このチャップリンの芸人さんの場合はライブだ。動きの一つ一つがチャーリーで、しかも子どもを中心に観客を巻き込みながら5秒ごとに笑いをとる芸!天才としかいいようがない。

私自身がチャップリンの大ファンだということもある。サイレント時代を含めて全部とはいわないまでも、少なくとも代表作とトーキー以降の映画はすべて観ている。(そしてこれを読んでいるみなさんにもそれをお勧めする。「独裁者」「ニューヨークの王様」「ライムライト」(←泣)といった晩年作には笑いを越えて気迫さえ感じるし、「キッド」「モダンタイムス」はあの時代を知る教養としてもお勧め。最近もあの有名なクマの映画「パディントン2」で、「モダンタイムス」へのオマージュが挿入されていましたね。もちろんすべての作品で笑えます!)

最後の方で、サイレント映画のように、芸人さんがメッセージと挨拶のフリップを出すのだが、そのうち印象的だったのが次の二つ。「笑いのない人生に価値があるかい?」「No War 」——これらのメッセージもまた、チャップリンそのもの!気がつけば、ロンドンに来てからこんなに笑ったのは初めてだった。

パフォーマンスの間、ずっとチャップリン映画に使われていた音楽が流れている。ちなみにチャップリンの映画で使われる音楽は、すべてチャップリン自身の作曲による。作曲だけでない。すべて彼がやる。監督も主演も演出も、トーキーになってからは脚本も。天才といわれるゆえんだ。

最後の方でチャップリンの歌声が流れてきた時には、笑いながら思わず落涙しそうになってしまった。亡くなったつれあいともチャップリン談義はよく盛り上がった。そんなことも思い出されて。そうでなくとも、チャップリンの音楽には愛が溢れていて、優しくて繊細、そして悲しい。

この芸人さんを知ることができて、よかった。


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