源氏物語 夕顔の巻 概略15(ちょっとはしゃいじゃう頭中将)
・ 二条院に帰り着く
源氏は魂が抜けたような有様で二条院に帰り着きました。
女房達は「どちらにいらしたのでございます」「お加減がお悪そうでございます」など口々に言いますが、源氏は無言で御帳台に入ります。
動悸のおさまらない胸を押さえても押さえても悲しみが押し寄せて来て、
「どうして一緒に乗って行ってやらなかったのだろう」
「息を吹き返して私が側にいなかったら女は何と思うだろう」
「見捨てられたと恨めしく思うだろう」と惑乱の中に思います。
息が詰まって、頭が痛くなり熱も出てきたようで、とても苦しくて、「こうして私も死んでしまうのだろう」と思い乱れます。
日が高くなっても起きてこないので女房達は心配して粥などを勧めますが、
源氏は体中が苦しくて気持ちが弱っていて、無気力に横たわっているばかりです。
・ 帝からの御見舞い、左大臣家の見舞い
内裏からの御使いが、昨夜所在がわからなかったことでの帝の御宸憂を伝えます。
左大臣家の息子達も見舞いに詰め掛けています。
・ ちょっとはしゃいでる頭中将
頭中将だけ呼び入れて、「立ったままでね」と言って、御帳台の御簾を隔てて話します。
(※ 座ると死穢に触れてしまう)
「乳母がね」「五月頃から重く患っていたのが、剃髪受戒などしてその霊験か持ち直していたのが、この頃また弱ってきてね」「もう一度見舞ってほしいと言うから、幼い頃から可愛がられた人の今はの際に行ってやらないわけにいかないから出かけたんだよ」
「そうしたら、病んでいたそこの下人が急に亡くなって、運び出すのも間に合わなくて乳母の家が穢れてしまったんだが、憚って日が暮れてから運び出したんだそうだ」
「そんなわけで私も穢れに触れた身となってしまったので、謹まなくてはならず、参内できないのだよ」
「それに今朝からは風邪なのか、頭が痛くて苦しいのだ」
「失礼して申し訳ない」などと言います。
頭中将は、「それではそのように御奏上申しておきますよ」「帝は昨夜も管弦の御遊びの時にあなたをお探しで、御不興であらせられましたよ」と言って、一度出て行くかのような思い入れを見せてから、
ドラマの名刑事のように振り返って、
「ねえ!」
「本当はどんな穢れにお遭いになったの?」「さっきのは嘘でしょ?」と突いてくるので、
源氏はドキッとして、「詳しいことはいいから、ただ思いがけない穢れに触れてしまったことだけ申し上げてよ」「気分が悪いんだ」とそっけなく言います。
・ ひたすらに落ち込んでいく源氏
頭中将とふざけているような気分ではないのです。
心の中はどうしようもなく悲しく乱れて、気分もますますすぐれず落ち込んでいくばかりで、人と目を合わせるのも苦痛になりました。
・ 蔵人弁を呼ぶ
蔵人弁を呼んで、先ほど頭中将に言ったのと同じことを帝に御奏上申し上げるよう頼みます。
左大臣邸の方へもその旨を知らせます。
Cf.『夕顔の巻』ちょっとはしゃいじゃう頭中将
眞斗通つぐ美
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