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源氏物語 夕顔の巻 概略25(軒端荻への文)


・ 軒端荻

もう一人の西の対の女は蔵人少将を通わせることになったようです。
処女でなかったことをどう思っているのだろうかと少将に同情する一方で、女の様子も知りたくて、
小君に、「死ぬほどお慕いしている心をおわかりでしょうか」なんて言わせます。

「一夜限りとはいえ軒端の荻を結ぶ契りをしたのですから、僅かばかりの恨み言を言う資格は私にもあるはずです」「あなたはつれないじゃありませんか」

この文を丈の高い荻に付けて「こっそりね」と小君に言い付けますが、

「少将に見つかっても、相手が私だとわかれば、まあ許さないわけにいくまい」と、源氏は驕っています。

小君は気を遣ったのか、少将のいない時に届けました。
「今頃何なのよ」とは思いつつ、あの最高の麗人が思い出してくれたのは嬉しいので、女はとにかく急いで返事を書きます。
「あなた様が少しの風をそよがせてくださっても、賤しい下草の荻はもはや半ばは霜に萎れておりますのよ」

下手なのをごまかして風流めかして書いている筆跡に品がありません。
火影に正面から覗き見た時のことを、「こちら側の嗜み深いあの人の姿態は忘れ難いが、向こう側のこの子は何の嗜みもなかった」「やかましく はしゃいでいたな」と思い出します。

それはそれで、やはり悪くない気がしてきて、
「我ながら懲りないものだな」「だってみんな可愛んだもん」「恋しちゃうんだもん」と浮気心が騒ぐ源氏です。

📖 こりずまに またもなき名は立ちぬべし 人にくからぬ世にし 住まへば

Cf.『夕顔の巻』軒端荻への文

眞斗通つぐ美

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