悪霊に導かれ社会正義に目覚めました

 小さい頃は何もなかった。霊感も予知能力も。そういった特異的な能力に目覚めたのは不登校がきっかけだと思う。家に引きこもって一日中ゲームをしていたら才能が開花した。悪霊の声が聞こえるようになったんだ。大気中に漂う邪悪な意志を感じ取れるようにもなった。そのうち事件や事故が起こることを予知できるようになった。何か悪いことが起きそうだと思っていると大事件や重大事故が発生する。悪霊が教えてくれることもある。酷いことが起こるぞってね。
 最初は、だからどうなんだって気持ちだった。自分には何の関係もないからね。でも、事件や事故の犠牲者についての情報をテレビやネットのニュースなんかで見聞きしているうちに、考えが変わってきた。こうした悲劇を防ぐために、何かしなければならないんじゃないかって思うようなったんだ。
 ある日、悪霊に聞いてみた。自分はどうしたらいいんだろう、自分に何ができるんだろうってね。そうしたら、笑われた。つられて、こっちも笑った。そのうち考えがまとまった。やれることを、やれる範囲でやろうって。
 僕は今、社会に警告を与える義務を自分に課している。SNSで、少しずつだけど。その成果が、だんだん出て来ていると思う。世界を支配しようとする幻の悪魔たちの存在に気付き、正義の光を守ろうと決意した人が、次第に数を増やしているから。
 もうすぐ世直しの時が来ることが僕には分かっている。光の戦士たちが邪悪な者たちを浄化するのだ。そのときが待ち遠しいよ。
 残念なのは、僕が光の戦士ではないことだ。だって、この力は悪霊のおかげで手に入ったんだもの。僕は浄化される側なんだよ、滅ぼされる人間なんだよ。
 それでも僕は心に決めている。皆の幸せのためならば、僕の体なんか百遍焼いても構わない。

#あの選択をしたから


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