[創作]彼は喜んでいた
たちまちのうちに炎上が起き、話題は世間に広がった。
数々の人間が本人を罵倒し、ネット上では非難の嵐となった。
しかし当の本人は喜んでいた。
実に喜んでいた。
「なあ、みてくれよこれを。私は初めて炎上を経験したよ。初めて私は炎上したんだ。私の言葉に人が何か決定的な不快を感じたんだ。もとより私はこの現象をずっと解明しようと努めてきたけどね、初めて炎上してくれたんだ。」
本人は嬉々として喜んでいた。
本人は続ける。
「これで私も嫌われ者だ。もうこれ以上世のために頑張らなくてよくなるし、もうこれ以上利益や見栄に惑わされることもない。ああ、私は自由になった。」
この男のことを何人が理解できるのかは分からない。
しかし現にこの男は生きる気力を失うどころか、ますます意欲増進、そのはちきれる健康に拍車をかけるのだった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?