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[創作]ささいな言い合い

「そこんところの努力が足りないんじゃないか?」

「申し訳ないですが、努力はしましたよ。おそらく努力は日本で相対量的にトップだと思います。私は自分の他に心象風景が言葉になって3千文字を超えることもあるメモを700日書いて、それを誰にも知られてない人間を他に知りませんよ。」

「う、うむ・・・。」

「巨大なエンジンなんですよ。巨大なエンジンが搭載された飛行機がここにある。だけどそれを走らせる滑走路がないんですよ。滑走路がない。で、エンジンはその場で蒸したままだからエンストしちゃうわけです。」

「なるほど・・・。」

「縁がないんですよ。縁が。ずっと探してますがね、縁がないんですよ。縁が来たとしても極一部しか認められないんですよ。3年ですからね、無報酬生活。」

「3年なんて、まだ短い方じゃないか?」

「いや、3年といっても道理の3年ですよ。みんな他の場合作業か業務の3年ですよ。僕は道理の3年をやってるんですよ。道理の3年をやって、まだ無報酬。」

「ううむ・・・。」

「別にこれが5年続こうが10年続こうが僕はもういいかな、と思ってもきました。でも体調不良があるからうざいんですよ。人生縁がなさすぎると、不調になるんです。」

「俺だって、不調になることはあるぞ?」

「たしかにみなさんも不調になることはあるかもしれませんが、それは昨日の不調の延長線上にあるんじゃないですか?それは昨日の不調と地続きのもの。でも僕のは一周まわって新たな地点に立つから起きる不調です。つまり螺旋構造のサイクルなんですよ。しかし僕が見るに、みなさんは直線上の不調だ。その証拠として彼らは実存的ではない。」

「なにッ、俺のことをバカにしてるのか!!」

「バカにはしていませんよ。バカにはしていない、むしろ警告してるんですよ。あなた方本当にそのままでいいんですか?僕は危険だと思うのですよ、それが続いて行った先の日本が非常にやわなものになってしまう。ヒリヒリと危惧してるんだ。」

「・・・。」

「だからとにかく、僕は今日も種を撒くわけですよ。いつ芽が出るかわからない種をね。それである時果報に恵まれたとしても、僕は何も驚きませんよ。それで人が僕のことを天才だ、とか言っても、そうじゃないすかだってジェットエンジン積んでるって言ったでしょ?道理を3年続けてるって。業務と作業じゃなくてね。驚くわけがないじゃないですか。」

「ではお前はこの世に恩は感じないのか。」

「機能不全ですからね。仮に恩を感じていたとしても、その時点で確実に、その親には尽くそうとは思ってないでしょうね。だから機能不全信仰は生まれないんですよ。機能不全を与えれば、天才は育つ。これは原理的に不可能だ。なぜなら機能不全から天才が育てば、その天才は育った時点で親を軽蔑し抜いた証拠だから。その結果としてその子は親に対して無関心だ。だってそうでしょ?自己実現を20年転嫁した人間にどう原理的に恩を感じるというのです?考えたら分かる。」

「お、俺はそうは思わない!現に親に感謝してるし、親のおかげで今がある!」

「それならそれで別にいいですよ。感謝ができないより感謝ができた方がいい。でも現に今先輩の身の周りの物事が立ち行かなくなって、若干人から避けられているのも、先輩の欠落だと思いますがね。それはどうだろう、辿れば先輩の親に行き着くと思うのですが。現に欠落してる人間は、親に対して感謝をしても、それは感謝なのではなくて"言い聞かせ"なんじゃないですか?」

「何ぃ!?俺の親を侮辱するのか!!許さん!!!」

「侮辱はしていませんよ。別にそれでいいならそれでいいんです。ただ僕が言っているのは、じゃあ親に感謝するなら物事は全てうまくいくはずだ、と言ってるんですよ。親への感謝が最上項目なら、親に感謝すれば全てうまくいくじゃないですか。でも先輩、あなたは現にうまくいってない。それは真の意味で親離れ、をする機会なんじゃないですか?」

「お前とは話にならないッ!!絶交だ!!!!」

「絶交なら絶交でいいですが、しかし先輩明日は奥さんに何て説明するんですか?実は他の女の人のところで遊んでた、なんて、どうやっても親に感謝したところで問題の根本的なところは解決しないように思われますが??そうでしょう?」

「!!!!!!!!!」

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