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記憶の中【白ワンピの女の子】

私には、細々とエッセイや物語を書いては投稿している場所があり、その中で良く参加させて頂く様になったユーザーさんの今回のお題が、「白ワンピの女の子」だった。

私はこの言葉を見た時、何処か記憶の奥底で眠っていた記憶が、そっとノックをしてきて、起こして、思い出して…と訴えて来ている様な感覚になった。


「………そうだ………私…………」


◈◈◈
私がまだ小学生だった頃、父方の祖父母の家に夏休みになると泊まりに行っていた。祖父母の家は、周りを森や田んぼに囲まれた田舎町にあり、その地域には、古くからの言い伝えがあった。

『白き鹿によって、この地は守られている。敬いの心を忘れてはならない』

というもの。

白い鹿……って、どんな風なのだろう。
でも、きっと綺麗なんだろうな、なんてこの時の思っていた。

ある日。
私が一人で祖父母の家の庭で遊んでいた時、声が聞こえた。


『ねえ、私も一緒に遊んでいい?』

声がした方へ振り向くと、そこには白いワンピースを着た、長くて綺麗な黒髪をしている私と同い年位の女の子が立っていた。

私は若干、一人見知りをする子どもだったのだが、何故かその子には人見知りする事なく、「いいよ!」とすぐ2人で遊び始めたのだ。

彼女と遊んでいる時間はとても楽しく、私は時間を忘れて遊んでいた。
両親と祖父母には、近所の子と遊んでくる!と言ってから家を出た。

彼女が連れて行ってくれたのは、家の近くにある水音が綺麗な河原で、彼女から色々な虫や魚の事を聞いた。

彼女はとても大人っぽく、物知りで…優しくて、同い年位なのに、まるで年の離れた姉が出来たように私は思っていた。

〜♪〜♪〜♪〜♪

街に響く、夕焼け小焼けの音楽。
もうそんなに時間が経ってしまったのか。

『帰ろうか。お家の人が待ってるから』

「えっ!嫌だ!もう少し遊びたい!」

私は愚図った。
嫌だ嫌だと、駄々をこねた。

けれど、

『駄目だよ。帰ろう』

と彼女に促され、そして彼女が優しく手を繋いでくると、私は何も言えなくなり、ただ彼女と並んで一緒に帰っていった。それでも、帰り道での彼女とのお喋りも、何だかんだでとても楽しかった記憶がある。


『……着いたよ』

祖父母の家の前に着くと、彼女はそう言って、ゆっくり繋いでいた手を離した。

『遊んでくれてありがとう。とっても楽しかった。』

綺麗な彼女の笑顔だった。

「私も楽しかった!またね!!」

私も満面の笑みで彼女に言う。

そう言って、私は彼女とサヨナラをした。家の玄関の前に立った時、また彼女の方を向いたが、もうそこに姿はなかった。

普通なら、まだ帰っている姿が見えても、おかしくなかったのだけれど。

その事を両親と祖父母に話したら、両親は気味悪がっていたが、祖父母は言う。

「きっと、ここを守ってくれている白い鹿様が、一緒に遊びたくて女の子に姿を変えて、凪ちゃんと遊んでいたのかもね」

……と。


どうして、今まで忘れていたのだろう。
あんなに綺麗で、優しくて、遊んでいてとても楽しかった彼女の事を忘れるなんて。

「今も、子供に姿を変えて誰かと遊んでいたりしているのかな?」

来週、また祖父母の家に帰省する。

その時には、白い鹿を守り神として祀っている神社にお参りに行こうと思う。

もう、姿の見えない彼女に『忘れていてごめんね。また会いに来たよ。
あの時は、遊んでくれてありがとう』

そう、伝える為に。

〜終〜

こちらの企画に参加させて頂きました!

最初は怖い話にしようかと思ったのですが、この様に収まりました。
山根あきらさん。ありがとうございました。



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