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相思相愛【妬いてるの?】1970文字#青ブラ文学部

大昔の話。

ある国に王女がいた。

彼女の側には、いつも彼女の婚約者が側にいて、結婚してからも、彼女が女王に即位してからも、2人はずっと一緒に居たそうだ。

そんな…2人の話。

🏵️🏵️🏵️
「リンカ〜おはよう」

柔らかいクリーム色の髪を小さくなびかせ、色男が愛する人の名を呼ぶ。

「ハルバ…おはよう」

呼ばれた彼女は静かに振り向き、彼の名を呼んで返事をする。

王女である彼女は黒髪に水色の大きな瞳を持っている。誰もがその瞳に見つめられると恋をしてしまう。

そんな噂まである。

「ここはさ〜、笑顔でおはようって、言ってくれないの?」

「………嫌……」

照れたような顔を見せると、リンカはすぐに顔をそっぽに向けてしまった。

周りには、気高く、頭もよく、政治にも強く、王女でありながら既に王の様な風格があると言われているリンカだが、婚約者であるハルバの前では、1人の女性としての可愛さが滲む。

「ハルバ、今日は少し遠方の街へ視察に行くのよ。
そんな寝間着のような格好してないで、早く正装に着替えてきて」

「あれ?言ってなかったっけ?
その視察に、今日俺は行かないよ」

「………………えっ?」

「俺は今日、ここに残って、情勢が少し不安定な国についての事を勉強する様に言われてる。

将来…リンカを助ける右腕としてね。

だから、視察には、お付きの騎士と付き人さんとで行ってらっしゃい」

リンカの胸は、ハルバの言葉を聞きながら…何故かチクチクと何かに刺されているような感覚になっていた。

「……わかったわ……」

そう言ったものの、何故か心は晴れなかった。

🏵️🏵️🏵️
リンカとハルバは、小さい頃から面識があり、ハルバの父は王直属の騎士で、この国の騎士団を率いる団長でもある。

王女である自分の結婚相手は、政治的な事を鑑みて選ばれるものだと思っていたリンカにとって、ハルバが婚約者だと言われた時、安心したのを覚えている。

ハルバも、リンカと一緒に行動する前は騎士団に所属していて、団長である父に似て、腕の立つ騎士だった。

けれど、リンカとの婚約が決まってからは、騎士団に所属しながら、国の勉強もするようになっている。

そんなハルバの姿を見ていたリンカは、言葉に出来ない罪悪感みたいなものを抱く様になっていった。

自分が、騎士であるハルバの力を、手折ってしまったのではないかと。

けれど、「気にしなくていいから、俺はリンカの力になりたいんだ」というハルバの一言に、リンカは丸め込まれてしまった。

ハルバの言葉は、リンカにとって、とても強い『力』を持っている。

🏵️🏵️🏵️
予定通りに視察を済ませたリンカは、夜に王城へと帰ってきた。
早く風呂へ入らなければと付き人と共に自室へ向かっている途中、ハルバと向き合っている女性に目が行った。

そして、ハルバがその女性の頭に手をのせ、触れている姿を目撃したのだ。

リンカは素早く自室へ入り、風呂を済ませると、窓際にある椅子に腰をおろした。

「リンカ様」

付き人に声をかけられた。

「ハルバ様がいらっしゃっていますが、いかがなさいますか?」

リンカはハルバを通すように言うと、付き人に人払いを頼んだ。

今、リンカの部屋には、リンカとハルバの2人だけだ。

「お疲れ様。リンカ」

「うん。ハルバもお疲れ様」

……何だか、チクチクした言葉になってしまう。

「…、なんか、言葉チクチクしてない?」

「……っ、してない…」

ハルバにはお見通しである。

「嘘だね……リンカは、少し怒ってると髪の毛をクルクルするんだよ」

「!!」

髪の毛クルクルしてたっ!

「何に怒ってるの…、?俺、何かしちゃったかな?」

す、素直に………正直に……………っ

「……誰?」

「……え?」

「夜、ハルバが頭を撫でていた、あの女性は誰なの?」

「………?………………………あっ!!」

「????」

「あれはっ!あの子は、姪っ!!」

「めい?」

「ほらっ!俺んち大家族じゃん?あの子は一番上の姉さんの娘。俺は叔父になるけど、年は2つしか違わないんだ。
それに、姉さんは遠方の国に嫁いだから、リンカが知らないのは無理ないかっ!今度紹介するよっ」

「め、姪御さんだったの………」

「もしかして、リンカ、嫉妬した?」

「…………えっ!!」

リンカは、自分の顔が熱を帯びるのを感じた。図星だ。

私は…嫉妬したのだ。

「……妬いてるの?」

ハルバは、いたずらな笑顔を向けてくる。

あ〜、好きだな〜と、リンカは思う。

「……そうよ」

「?」

「妬いたの……それに、一緒に視察に行けなくて寂しかったわ」

……少しの沈黙。

すると、ハルバが静かにリンカに近付き、頬に手をあて、キスをしてきた。

「ははっ……リンカに嫉妬してもらえるなんて、ルーナ(姪)にお礼言わないとなっ!」

「……………、」

リンカは照れながらも、ハルバのキスの後にキスをお返した。

お互いにキスのお返しを繰り返しながら2人は言う。



『誰よりも、貴方
      君を愛してる』


〜終〜


こちらの企画に参加させて頂きました。

山根あきらさん
2作目を書いてみました。
よろしくお願いします。



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