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鳴かないで、もう少しで帰ってくるよ(エッセイ)

私はよく、野菜の直売所に行く。
というか、行くようになった。

リーズナブルな値段で量もスーパーで購入するより沢山入っているお野菜は、私のご飯の心強い味方。

そんな直売所へ行った時の、ほんの少しのお話。

この直売所は、沢山の商業施設がある中の一角にあり、それなりの大きさの直売所だ。そんな直売所の駐車場に車を停め、何か良い野菜があるかな〜?なんて思いながら車を降りた時。


クウ〜ン。クウ〜ン。


何処から聞こえるわんちゃんの鳴き声。

聞いているこちらが悲しくなりそうな程の寂しくて心細いといっている様な鳴き声だった。

鳴いていたわんちゃんは『ラブラドールレトリバー』かな?というわんちゃんで、私の隣に停まっていた車から聞こえてきていたのだ。

助手席に大人しく座って、寂しそうな鳴き声を出している白いラブラドールレトリーバー。

「飼い主さん。戻ってこないのか」

よく車の中で飼い主さんが戻ってくるのを待っているわんちゃんは居るけれど、大人しく待っている子もいれば、この子の様に寂しそうな鳴き声を出して、飼い主さんが戻ってくるのを待っている子も見たことがある。


「……もうちょっと待ってなね
飼い主さん戻ってくるから」

私はそう小声で言いながら、何処か後ろ髪が引かれる思いで直売所の中へと入っていった。

リーズナブルな野菜を何種類か購入し、駐車場へと戻ると、私が出てきたより少し前に、飼い主さんが戻ってきていた。

白いラブラドールレトリーバーは、尻尾を嬉しそうにパタパタと振っている。

私は、飼い主さんが戻ってきて良かったね。なんて思いつつ……

私より先に車を停めていた飼い主さんは、私より少しだけ早く戻ってきてという事は、私が直売所に居た時間よりも長く買い物をされていたのだろう。


「……もし出来るなら、もう少し早く戻ってきてあげてほしい。と、赤の他人は思う」

私はワンちゃんや猫ちゃんを飼った事はないけれど、あんな寂しそうな鳴き声をさせてしまうかもしれないと思うと少し複雑な気持ちになった。


……仕方ない、ことなんだけど……ね。

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