僕のカノジョはXジェンダー

ちょっと前にコンクールに出して落ちたやつ
なにかしらに出して落ちたやつはここで承認欲求発散させていただきます
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   僕のカノジョはXジェンダー

「お姉さん座ったら?」
紳士的であるはずの行動も侮辱になってしまう。
「僕たち次で降りるので」
大抵黙って突っ立っているので、僕が断って、別の車両に移動する。
   私は「不定性」です。
そう書かれたジェンダーマークが鞄で揺れている。
202×年。
見た目で判断できないジェンダーのためにジェンダーマークが作られた。
マタニティマークやヘルプマークのように、見えなくとも言葉の配慮が必要な人のために作られた。
白い四角の中に「私は、『空白』です」と書かれてる。
空白に自分の性を書く。
その上に虹が架かっているマーク。
シールや安全ピンでつけるタイプがあるが、多くはキーホルダーで僕のカノジョは外に出るときはいつも鞄につけていた。
カノジョと言っても女性じゃない。
世間は恋人に、カレシかカノジョか役割をつけたがるから、世間に合わせてやるためにわざわざそうさせられた。
 僕のカノジョは不定性である他にいくつかの精神疾患も患ってる。
カノジョの家は、男尊女卑が酷かった。
今でこそ柔軟になりつつあるものの、カノジョの両親はひどい差別を受けたそうだ。
男が料理するなとか、女が力仕事をするなとか。
カノジョは両親に自由に育てられたものの、そういう思考を持った他の大人と一緒に住んでるだけで、その存在に苦しめられていた。
僕も家が嫌いだったから、中学を卒業して二人で逃げた。
 僕のカノジョはいつも情緒不安定だった。
「僕は元々こうだよ。
時代の所為じゃない。
家の所為じゃない。
僕は女じゃないんだよ。
分かってくれるでしょ?
料理も裁縫も好きだよ。
でも女だからじゃない。
髪だって伸ばしてるよ、スカートだって履きたいよ。
でも女だからじゃない。
僕は女じゃないんだ。
今は、男とは言い難いけど。
上手く言葉にできないの。
ねぇ、分かってくれる?
分かってくれるよね?」
カノジョは男だったり中性だったり両性だったりする。
女であることはない。
女ではない性別でありたいから。
僕はこの子が好きだ。
カレシとかカノジョとかで縛られたくない。
僕の苦しさも一緒に叫んでくれるから、僕はずっと救われてる。

 ジェンダーマークは、僕が通っている精神科に二人で行って、貰った。
精神疾患がない人ですら病院に行かないと発行してもらえない。
簡単に買えてしまうとジェンダーや性同一性障害だとネタにして嘘をついている人が買ってしまう可能性があるから。
性別という、生死すらも分けてしまうような問題を、流行りもの感覚で着飾って馬鹿にしているような人がいるのは本当に腹立たしい。
「お前も嘘だろ」と責め立てられ、いじめられて自殺未遂したネット友達もいた。
首を絞められ逃げ場も隠され、まるで狩られているようだ。
僕たちには偶然、幼馴染という逃げ場があった。
男尊女卑を嫌った親でさえ僕が“僕”でいることをあまり良しと思ってくれなかった。
祖父母や親せきの影響だと思い込んでいた。
僕を唯一認めてくれたのが、地獄から僕を救い上げてくれたのが、僕のカノジョだった。
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性別も目に見える形になったらいいのに
マタニティマークもヘルプマークも、僕は授業で習ったけど、世間的な知名度は低いらしい
少なくとも義務教育にジェンダーの授業を取り入れてくれたら
理解度よりも先に認知度が広まったら
分からなくていい
それよりも存在を知ってくれたら
そうやって苦しんでるって世間的な認知度が広まったら
馬鹿にしてくる人間も減るのかな
ジェンダーマークを文字として使ったけど、マークとしてでも、とにかく目に見えるような形に実現しないかな
思ってるだけじゃダメって、変わらないって、分かってるけどね
とはいえ、動けない
そんな簡単な問題じゃない

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