見出し画像

エイリアン:ロムルス論評「ビジュアルは素晴らしい、が!」(批判内容にはネタバレあり)

さて、エイリアン:ロムルス初日に見に行ってきました

ただ、僕はエイリアンシリーズが好きなので、事前にすでに公開してた海外のネタバレ無しのレビュー見たり、関連動画を漁ってた影響で、意図せぬネタバレを喰らったりしてたんですね。
ラストとか大まかな展開のは。ミュート機能使うべきでしたよね。。。
そして海外レビューの絶賛の多さに期待値爆上がり

予告も僕には最高の出来で、期待値最高潮で、ある程度のネタバレ喰らった人間が観た感想で言うと、

「面白かった」

程度でした。

残念なことに、見た事ない人や見るの迷ってる人に「絶対面白いから観て!」とオススメできる作品ではなかったかな。

かといって「見るのやめときな」と止めようとも全く思わないので、気になる方、エイリアンシリーズのファンなら観ても損はないかな、という程度です。

※追記:ただ、2回目観たら結構面白く見れました。1回目では気づかなかったことも気づけて、丁寧に作られてるのが余計わかりましたね。

とはいえ、不満点はやはり変わらなかったので、以下にこれまで通り記します。




 よかった所


圧巻の迫力!


エイリアン:ロムルスの素晴らしい点は、やはりそのセットデザインやシネマトグラフィー(撮影とか)にあると思いますね。

予告にもあったジャクソンスター脱出後の太陽を見るシーン、宇宙ステーションの崩壊シーンは大画面でやはり壮観で綺麗でしたし、エイリアンの掃射シーン、エレベーターシャフトのシーンは見応えがありました。

無重力のアクションシーンやフェイスハガーの温度探知性を活かしたシークエンスはおそらくシリーズ初で、新しくてよかったと思います。

本作をただの既存作品の焼き直しだと言ってる意見がありますがそれは間違いです。
本作オリジナルの展開、演出もちゃんとあります。

CGを使わず実物にこだわったセットデザインも功を奏し、かなり迫力あるものになってます。

あと、主演のケイリー・スピーニーがめちゃくちゃ可愛らしくて知的で美人なんですよね。


好きだ!



スピーニーの為にある映画と言ってもいいくらい、彼女が無双する映画でした。

余談ですが、監督はマジでスピーニーを好きなんじゃないかと思います
監督の過去作の主演女優にも似てて好みの系統なんだろうし、この作品もキャスティング前から予め彼女に当て書きしたほどらしく。

この作品は監督の彼女への巨額の資金をかけた私的なラブレターだと思うとなんだか微笑ましくもあります(いや不気味かな)

作中のレインとアンディの義兄弟みたいな関係性も面白く、時には泣けるので、エモい展開もあっていいと思います。

非常に飽きさせない作りになっているので、エイリアン初心者にオススメできる、

2000年代のエイリアン映画の代表作

と言っていい出来だと思いますね。

とまぁ、よかった所は以上です。
褒めるにあたって語ることが多くはない、ビジュアル重視の語れない映画であることが一部映画ヲタクに不評な理由かもしれません(苦笑)


 悪かった所


スーツ重そう。。。


ネタバレなしで大まかに書くなら以下の6点。

① 既視感が目立つ

② ストーリーが薄い

③ キャラクター(人間ドラマ)が薄い

④ 予告でハイライトを見せ過ぎ

⑤ 設定の矛盾と疑問点

⑥ ゼノモーフの神秘性と知性が薄い

です。
いや、面白かったんですけど、不満点の方が饒舌になれる映画なんですよ。。。
素晴らしいビジュアルに中身が追いつかなかったというか
それだけ勿体無い、もっと名作になりうる映画だったと思ってるんですけどね。

これ以降は内容にも細かく触れていこうと思います。

以下ネタバレあり


① 既視感が目立つ


何度目のゼノモーフか

とにかく既視感が一杯なんです。

勿論オマージュもあるのはわかります。そりゃあ天下のリドリー・スコットが名ばかりの製作ではなく脚本からチェックしてたぐらいですからね。
むしろプロメテウスにも関連づけるよう脚本を書き直させたとか。

気を遣った部分もあり、監督がシリーズのファンであることから定番の展開等を盛り込んだ部分もあるのはわかるんですけど、「新しさ」が少ない。

勿論、上記の通り、エレベーターシャフト、ゼノモーフ掃射シーンにもある無重力でのアクションは新しいですし、フェイスハガーの温度探知性(これもロムルス発かな)を活かしたすり抜けシーンも新しかったです。

そういう部分的な新しさはあっても、小ネタや大まかなストーリーライン、展開に類似点が目立ったのはどうかと思いました。

サプライズであり、オマージュでもあるんでしょうけど、ルークのキャラクター性や人間に「同情するよ」と嫌味言うのも1のアッシュと全く同じだし
(少しキャラクター性に変化があってもよかったのでは?)

最後のモンスターを妊娠→出産はプロメテウスで既にやりましたし(プロメテウスは帝王切開)、ラスボスが脱出艇に潜んでてラストバトル的な流れも1、2、4、コヴェナントで経験済みです。

ラストバトルで宇宙服着るのは1、コヴェナントと同じ。

宇宙に放り出して倒す展開も同じく1、2、4、コヴェナントで経験済み。

あとレインの航海日誌的なので終わるのも1のオマージュ。

いわゆるこのシリーズの「お約束」もあるので、好ましく見るべきなのかもしれませんけど、僕は「またかよ」と思ってしまいました。

他にもセリフが色々まんま引用されており、これは大喜びするファンもいれば、量が量なので「クドい」と感じるファンもいるそう。

② ストーリーが薄い


期待値爆上がりだったのに。。。

僕は予告で、もう少し宇宙ステーションの生き残りの人と絡むと思ってました

ルークは人間ではないですし、宇宙ステーションの生き残りと交流し、協力しつつも向こうは向こうの思惑があり、みたいな話の方が絶対に面白かったと思うんですよね。

交流する相手は人間の方がエグみは増すのでいいと思うんです。

本編だと若者5人+1体で基本的に物語は進み、あれよあれよと死んでいく感じで、もう少しエモーショナルな盛り上がりが欲しかったなぁと思いました。

僕には淡々と物語が進み、どうでもいい登場人物が次々死んでいく、ダメなパターンの映画に思えたんですよね。

序盤はよかったんです。宇宙ステーションに入船早々フェイスハガーに寄生され、アンディはキャラ変、船は切り離され仲間と離れ離れ、さらにステーションの衝突までの時間の大幅な短縮と、次から次に悪いことが起こる。
序盤が1番予想外で興奮しました

でもそれ以降はなんか落ち着いたというか、タイムリミットの割に人の話落ち着いて聞いたりとかパニックの要素もなかったんですよね。

タイムリミットの緊迫感がもっとあったら全然違う印象になったと思います。

あと、物語の残酷な鉄則として、やはり「死んでほしくないキャラが死んでしまわないと話は盛り上がらない」なんですよ。
エイリアン2とかも、だからこそかなり面白くてエモかったと思うんです。
この映画って特に感情に来るカタルシスはないんです。

でもラストのレインの

“Die motherfucker!!!!!”  にはシビれましたけどもw

レインとアンディ以外のキャラの掘り下げと見せ場が少なく、なんかキャラの使い捨てみたいな感じがイマイチでした。

ちなみに、ラストのモンスターのデザイン等に批判があるみたいですけど、僕は気になりませんでした。
プロメテウスに出てきたエンジニアみたいなデザインで、オマージュというか共通点が見えてよかったですし、プリクエルを観てる人にはそれほど違和感はないんじゃないかと。

③ キャラクター(人間ドラマ)が薄い


キャスト同士は仲良かったみたいですね。


そもそも主要キャラの若者達になんか好感持てなかったんですよね

ビヨンはひょうきんだけど、理由はあるもののアンディに冷たくて感じが悪く
合わない奴には冷たい、お調子者の嫌味な奴、みたいな現実にいそうな嫌なキャラというかね

タイラーもリーダー格で妹思いなのはわかりますけどそれ以上のものはなく
(もっとイケメンで鋭い感じがあった方がよかったと思うんですけど、スピーニーへの監督の愛を思うとあえて大した事ない奴キャスティングしたのかと邪推。実際、スピーニーの好みではないはず)
レインの元カレって設定も別れた理由とかも出ずにただの設定で終わったのも勿体無い。

ナヴァロも大してキャラ立ちしてないし

ケイに至っては、予告ではもう少し明るく弾けた性格かと思ってたのに、おしとやかビッチ(父親不明で妊娠中)という新しく、どうでもいいキャラ設定でガッカリ。
活躍もせず終始いたいけな妹属性なのでラノベとかアニメキャラみたいな感じでした。

ちなみに、劇中では軽い匂わせ程度でしたが、フェデ監督がケイの子供の父親はなんとビヨンだと明かしてるようです。従兄弟なのに
ビヨンが死ぬ前のシーンで艶かしく見つめ合ってたのはそういうことなんですね。

アンディは途中キャラ変するのも、レインの親父が仕込んだ親父ギャグ言うのもよかったですけど、じゃあめちゃくちゃ好きになれるかと言うと別に、な感じ。

レインに関しては、美しいし、見栄えはいいんですけど、1人目立ちし過ぎというか。

小柄ですけど強そうなんですよね。意思のある、頭もいい力強い女性って感じ。
それが悪いというより、リプリーは何か気の毒な感じがあって、それが戦うのがよかったんですけど、今回は気の毒な感じもなく、応援しようという気はリプリーほどは起こりませんでした。
カッコいいんですけどね。
ちょっとドライな感じがありますよね

結局、上にも書きましたけどこの映画ってレインとアンディの話なんですよ。この2人の絆は泣けるんですけど、他のキャラが薄くて気の毒過ぎてなんか嫌に思いました。
もっと見せ場とか好感持てるシーンとか活躍のシーンを与えて欲しかったですね。

④ 予告でハイライトを見せ過ぎ


エイリアン3のオマージュすな


あと衝撃の死亡シーンの展開をほぼ予告で見せてたのもあって、サプライズにならなかったんですよね。

予告の時点でハイライトを見せ過ぎてたなぁ、と思います。だからこそ予告はめちゃくちゃ面白そうに仕上がりはしてましたが。

本編のサプライズがほぼほぼ無かった。勿論、いくつかネタバレ喰らってたのもありますけどね。

⑤ 設定の矛盾と疑問点


設定の矛盾としては、
ゼノモーフがなぜノストロモ号の残骸付近を岩に閉じ込められて漂流してたのか。

いや、アイデア自体は面白いと思うんです。一作目のゼノモーフをここにきて持ってくるのは。

ただ、ノストロモ号は自爆、爆散したんで普通は位置を特定するのも無理なはずだし、ゼノモーフはノストロモ号から脱出したナルキッソス号から放り出されましたからね。

位置を特定できるのも2つが同じような位置に漂ってるのも岩に閉じ込められてるのも不思議過ぎて、しかも説明もないんでモヤモヤモヤっとしてしまいました。

そもそもウェイランド社はどうやってエイリアンの存在を知れたんでしょうね。

あと、ナヴァロがフェイスハガーに寄生されて、目覚めた時、記憶を保持してたんですよね。

フェイスハガーに寄生されたらその前後の記憶を失ってるイメージがあったので、これも不思議でした。

最後に、あの宇宙ステーションはなぜ廃棄されたのか、です。あれ程の施設はかなりの巨額が投資されてるはずで、簡単に見捨てるはずもないのになぜ放置されたのか。

あと、死体の腐敗が進んでないので、廃棄から時間はそれほど経ってはないはずなんですよね。

そこら辺の説明が無いのでやはりモヤモヤしますね。

⑥ ゼノモーフに神秘性と知性が薄い



ギーガーのデザインは永遠です。


1はまだゼノモーフに神秘性すらあったと思うんです。
それこそアッシュが完全生物と言ったくらいに。

でもそれ以降はただのモンスターというか、2では銃で殺せることがわかってしまったので、ちょっと安っぽくなってしまいましたよね。

シリーズもので見慣れてくるのもあって神秘性が薄れるのは仕方ないんですが、今作ではゼノモーフ掃射シーンがあって、そこで思ったんです。

それ自体は迫力あるんですけど、「あれ?おかしいな?」って冷静に考えると思うのは

ゼノモーフに知性がある割に、どんどんレインに撃たれにくるな、と

本作においても待ち伏せするなど知性がある設定なのに、銃持ってるレインに次から次に撃たれてどんどん殺されてしまうんですよね。

数で圧倒できるほどの近距離でもないし、広い空間で狙われやすいんで、ゼノモーフだって
やべ、このまま行ったら俺死ぬわ
と数体殺された時点で無闇に突っ込んで行かないと思うんですよ。
結構殺されてからようやく撤退するという

2だったら数で圧倒してるし障害物とかもあって突っ込んで行くのもまだわかるんですけどね。

映像的には迫力あるものの、よく考えたらおかしい点がこの映画一杯あるんですよね。

細かい点なら重力が何度もON / OFFになってる割に、ビーカーの中の液体にフェイスハガーの足が浸かってるとか。
(何度も浮かんだり落ちたりしてるならビーカー割れてる)

色々脚本等に穴がある所がこの映画のアンチを生んでるのかなぁ、と。

まとめ(と海外レビューで見かけるアンチの理由)



色々文句はありますが間違いなく良作ではありました。


と、いうわけで、僕はそこまで夢中にはなれませんでした。
とは言え、ビジュアルに関しては本当に素晴らしく、シリーズとして新たなチャレンジもしてるとは思います

総合的な点数で言えば贔屓目で80点ってところでしょうか。
もっと盛り上がりやスリルを求めてましたが、案外の出来で傑作というよりは良作止まりな感じで。

といっても、日本のレビューサイトでは現時点で
Yahooだと星 3.9 / 5。
Filmarksで4.0 / 5.0と高評価です。

自分が思ったより高い評価ですが、エイリアンシリーズのファンなので高評価自体は嬉しいです

ただ、海外のレビューで星1とかつけてる自称ファンのアンチがそこそこいるんですけど、その気持ちは少しわかりました。

海外でも観客支持率85%、星の平均も4.2 / 5と高評価なので、それに対する反発心からでしょうね。

でも総合的にクオリティの高い作品ではあると思うので、星1つけるのはファンじゃないなと思います。

あと、海外の興収は実は初動に比べると失速してて、その理由がやはり作品の出来にあるんじゃないかなと思います。
ほぼファンが観て(というかファンしか見ずに)誉めそやす作品になってしまっている印象がありますね。

今は熱烈なエイリアンファンも褒めてますが、人間ドラマに関してはシリーズ中最も薄味かなぁ、という気はしています。

個人的にはやや肩透かしを喰らった形にはなりましたが、新作がコヴェナントより盛り上がってるのは嬉しく、エイリアンフランチャイズ復活になったのはよかったと思いますね。

次はTVシリーズの「エイリアン:アース」
ショーランナーが「ファーゴ」シリーズや「レギオン」のノア・ホーリーなのでそちらを楽しみに待ちたいと思います。


この記事が参加している募集

よかったらサポートお願いします!