【第4回】防衛財源確保法案審議入り 増税方針は間違いだ! 長期国債発行や60年償還ルールの廃止を!

 4月6日の衆議院本会議で防衛費増額の財源を裏付けする防衛財源確保法案が審議入りした。本案では、税外収入を積み立てて複数年度かけて使う「防衛力強化資金」の創設を盛り込んでいる。財源の4分の3は新型コロナ対策で厚生労働省所管の独立行政法人に積み上がった剰余金や、外国為替資金特別会計の剰余金などの歳出改革や税外収入で確保し、4分の1は増税で賄うという。

 防衛費増額については、2023~2027年度の5年間の防衛力整備計画において、43.0兆円程度の水準を達成するとしている。その中で財務省が提示している財源確保は40.5兆円程度だ。

 その内訳は、2022年度当初予算5.2兆円をそのまま5年間継続したとして25.9兆円。そのほか、歳出改革で3兆円強、決算剰余金の活用で3.5兆円程度、防衛力強化資金で4.6兆~5.0兆円強、税制措置(防衛増税)で3.1兆~3.5兆円程度で、計14.6兆円程度としている。

 防衛力整備水準の43.0兆円程度のうち防衛増税を含む財務省提示の予算総額は40.5兆円であり、2.5兆円は足りていない。財務省は、その分を2024度から実施予定とする増税で賄うというが、歳出改革が予定通りいかない等の理由をつけてさらに増税を仕掛けてくることも考えられるので要注意だ。

 防衛費増強の目的は、中国、ロシア、北朝鮮などの脅威に対抗して防衛力の抜本的強化を図るためだ。もし増税をした場合、平時に経済全体を弱めてしまい、万が一有事になったら経済を悪化させ、有事対応すらできなくなってしまうかもしれない。

 また、政府が企業に賃上げを呼びかけている状態での増税では賃上げマインドを損なう。これだけ見ても、タイミングとして間違っていることがわかる。

 さらに、財政学の「課税平準化理論」の観点からみても、増税は間違いだ。課税平準化理論とは、世代を超えた負担の平等性に重点を置き、長期国債を発行することで、課税負担を国民皆で平準化するということだ。この理論のポイントは、便益が長期にわたるかどうかだ。防衛力強化の場合、将来世代に国を残していくという意味で便益を受けるので、負担は理にかなっている。

 例えば、ドイツではロシアのウクライナ侵攻を受けて、国防費をGDP(国内総生産)比1.5%から2%まで引き上げたが、その財源は国債だ。日本もドイツと同様に、増税ではなく長期国債で防衛費財源を確保するべきだ。

 国際の「60年償還ルール」の運用見直しも必要だ。毎年国債残高の60分の1について、一般会計から国債整理基金特別会計(減債基金)への繰り入れが債務償還費として行われている。しかし、先進国では減債基金自体、今は存在していないので、債務償還費の繰り入れもない。60年償還ルールを廃止して、債務管理庁を創設することが世界標準だ。

 いずれにせよ、岸田政権・財務省の増税するという方針は間違っている。


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