【第21回】日銀の政策変更「1%を目途」に さらなる長期金利の見直しも
日銀は10月30、31日の金融政策決定会合で、長期金利の上限を柔軟化し、「1%を目途」と改めた。 今後の日銀はどのように動くだろうか。
7月27、28日の決定会合では「10年物国債金利について1%の利回りでの指し値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する」としていた。
これを受けて長期金利の上限を「1%」に厳格に抑えるとしてきた運用を、10月の決定会合では上限を「1%を目途」に見直しをされたと報じられた。「1%を目途」なので範囲は明確ではないが、これまでの傾向から考えると0.25%程度であろう。
次回の決定会合は12月18、19日にあり、年内最後の決定会合となる。
日銀は伝統的に選挙期間中やその直前には政策変更を避ける傾向がある。岸田文雄政権の内閣支持率の低迷などから衆議院の解散総選挙が近いとも言われているので、次回の決定会合で政策変更を行うのはなかなか難しいかもしれない。
今回の政策変更で長期金利の上昇を容認したので、長期金利は上昇するだろう。しかし、短期金利はゼロ金利政策によって上昇しない。
日銀としては短期のゼロ金利を見直したいところだが、変動住宅ローン金利に直接関係するため、慎重だろう。
長期金利が上昇し、短期金利がそのままだと短期のところで、イールドカーブ(国債の利回り曲線)がそのうち歪んでくる。そうした歪みを是正するという名目で、短期のゼロ金利を今後、日銀は見直してくるのではないか。
しかし、長短金利差が1%程度しかない中ではイールドカーブの歪みは大したことがないので、次の手はさらなる長期金利の柔軟化かもしれない。
そのように考えると、今の政策である「10年物国債金利が0%程度」が有名無実化する。10年物国債金利を0%から0.25%程度にすることや10年物国債金利0%から5年物国債金利0%への変更、さらに強烈なのだと10年物国債金利0%の廃止などの政策変更があり得る。
いずれにしても今回や7月の日銀の政策変更は間違っている。日銀は今後の物価見通しについて、消費者物価指数(CPI)の除く生鮮食品では、2.8%(2023年度)、2.8%(2024年度)、1.7%(2025年度)とし、除く生鮮食品・エネルギーでは、3.8%(2023年度)、1.9%(2024年度)、1.9%(2025年度)としている。
日銀はインフレ率が今後、沈静化していくと見通しているにもかかわらず、金融政策の変更をするのは愚行だ。
ところで、今回の決定会合の内容は、事前にマスコミにリークされていた疑いがある。これは由々しき事態であり、誰がどのような形でリークしたのか調査し、次回の決定会合以降、それを阻止しなければならない。
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