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【連載】しぶとく生きていますか?⑮

 衣類を纏い、茂三は、来た道を歩いた。
 茂三の周りには、表現できないほどの美しい花々が咲き誇っていた。
 その花々を眺めていると、突然暗闇になった。そして、躰がふぁーと浮いた感じになり一瞬にして気を失った。


 気が付くと、フンコツの海岸の小さな入り江の砂場に横たわっていた。潮の匂いがする。フンコツの匂いだ。深呼吸をした。茂三は、生き返ったのだった。
(俺は生き返った。無意識に泳ぎ着いたのか)その時、口が耳元まである怖ろしい老人が言ったあの言葉を思い出した。

『地球では人間同士が醜い争いをしている。お前が愚かな人間どもを目覚めさせると約束するなら娑婆に戻してもいい』ということを。

 その約束は、いまの茂三には途方もなく難しいことと感じた。しかし俺はあの老人と約束した。
 あの約束を反故にはできないと思う茂三であった。

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