障害者グループホームの世話人さん

障害者グループホームに入居している。
ルールのゆるいグループホームで、みんなきっとのびのびやっているのだろう、真面目な人はとことん真面目で、やんちゃな人はとことんやんちゃだ。
わたしは真面目な部類に入るが、プライベートはかなり自由気ままにやらせてもらっている。
そんなある日、新しい世話人さんが入ってきた。
食事の支度もする世話人さんだ。
珍しく、男性だった。
以前からいる女性の世話人さんに、彼を紹介され、挨拶をした。
彼は言った。
「調子はどう?」
突然のタメ口に戸惑った。
ナメてんのかこいつ。
イラッときたので塩対応で済ませ、そのまま彼のことは忘れていた。
ところが彼はそれ以降頻繁にシフトに入るようになった。
しょっちゅう顔を合わせるうちに、彼が結構気さくなおっちゃんだと気づいた。
今日のことだ。
朝から彼が一人部屋のドアをノックした。
検温だ。
コロナとインフルエンザが流行っているから朝夕検温がある。
とことこ出ていき、今日はどういう予定か聞かれ、ユニクロの超極暖が期間限定価格だからお出かけだ、と答えた。
わたしは言った。
「お熱でしょう?」
彼は動揺した。
「えっ?ああ、あれ?体温計あるかな?」
しばらくあちこちのポケットを探り、彼は突然開き直った。
「体温計を忘れてきました。何度ですか?」
彼はわたしも体温計を持っていないことを知っていた。
わたしは答えた。
「6度5分で。」
テキトーだ。
「はい!36度5分ですね!」
と彼は言い、そのままメモ書きして、ハッハッハ、と笑った。
わたしも、ハッハッハ、と笑った。
今朝の検温は、それで終わった。
ゆるい、ゆるすぎる。
なんて気楽なおっちゃんなんだろう。
グループホームの社長もゆるいけど、負けず劣らずなのではないか。
わたしは彼が大好きになった。
ちょうど、推し活を始めたいと思っていたところだった。
推しの候補に入れてみようと思っている。

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