バケモノ

ホテルの部屋に入った瞬間、

ダムが一気に崩壊し

「もうやめたいよぉぉぉっ」

大人ぶってたから、
誰も想像もつかないくらい子供みたいに泣いた。



10代だからと世間は優しくない。

誰も年上だからって良い大人として接してくれる訳でもない。


世間は敵

道の隅っこでうずくまっていても、悪の手しか寄ってこないのが現実だ。









子供らしい時期を欠いて、
世間を知り、  働いていた。

心を緩ませられる場所…

そんなものは。

泣いている姿を見せられる身内なんてないし。


ホテルの部屋のドアを開ければ、外はサメだらけ。
常にそんな感覚があった。







泣いたのはその日だけで、


次の日からは泣かなかった。



正式にメイドカフェで働ける18歳を迎えた頃、

家を借りるお金が貯まった。

店長には私の状況を軽く話してあったので
、部屋の保証人になってくれた。

正式には、店長の弟の名義で部屋を借りてくれた。







日当たりのいい1DKに一人暮らしには
めずらしい大きなキッチンの部屋を借りた。
家賃はそこそこしたが、これまで目標として
頑張ってきた、理想の通りの部屋を叶えたかった。



家具はすべて猫脚で揃えた。


冷蔵庫は大きいのを、ラグも食器も
憧れていたフェミニンな雑貨屋さんで取り揃えた。

そしてクローゼットには新しく新調したお洋服を掛けた。



私のずっとの夢を部屋を、叶えた。


ふわふわの丸いラグに寝転ぶと、

まるで宝くじに当たって将来は安泰かのような
高揚感でいっぱいになった。


この世界で生きる権利をやっと手に入れた気分だった


この部屋には敵はいない。
自分という、
味方しかいないのだ。








その幸せは、毎日少しずつ霞み、1週間後には消えた

張り詰めた神経を休ませようとした瞬間、反動がきた。

実家を出てからすぐぶらせていた、
過食症が再発した。



安心してゆるんだことが仇となったのか、
もう頑張れそうになかった。



外で得たストレスを切り離せず持ち帰るようになった。


ただ生きる為に、これからもずっとこの正活を
守る為にまだ頑張り続けなきゃいけないのか。


明日も明後日もその次も、こんな敵だらけの外で神経をすり減らし、毎日それを繰り返すのか。

理想を集めた部屋に帰って来ても、


生活リズムは崩れていった。



近所に24hスーパーがある。

深夜食べたいものをカゴいっぱいに買う。

何かに取り憑かれたような目で食べて、吐く。



やめたいよ苦しいよ


吐くのに唾液が過剰に分泌されるためフェイスラインが腫れる。

摂食障害者ならではの
浮腫んだような、スッキリしない顔になった。



苦しい 辛い もう食べたくない

食べ物を見るのが恨めしい。

だが、
食べ物を咀嚼しているときだけ、
その2時間だけは「何も考えない」が出来た。


大食い選手でもなければ、
2時間も食べ物を口に入れて、咀嚼し続けるのは、
一般的にはなかなかありえない。



食べ始めて30分も経てば、
もう食べたいという気持ちは失せていた。

そのからはまるで詰め込み作業で、
噛むことに疲れ、目が虚ろになっていた。


この先は吐くだけ、というゴールが見えているのに、この食べ物を運ぶ手を留めたら、地獄が戻ってくる。
それも怖くて、食べながら泣くことも多かった。


自分がバケモノ吐くために大量に詰め込むバケモノのように思えた。


母と暮らしていた頃から、
眠っている時以外はつねに神経を張り詰め怯えていたから

安心やリラックスを知らない。



脳がバランスを大きく崩した。





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