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所得税シリーズ〜相続した不動産収入は誰のもの!?

 今日は相続によって取得した賃貸用不動産の収入の取扱いについてです。

被相続人が死亡した日の翌日からの賃料が相続人に帰属する

 まず、大原則として被相続人(死亡した人)が死亡すると相続が開始(民法882条)し、相続開始によって相続人は被相続人の一切の権利義務を承継する(民法896条)ため、死亡した日から被相続人の財産は相続人の物になります。

 となると、死亡した日からの賃料が相続人に帰属するのだろうと思えるのですが、国税庁のHPでは「死亡した日までの所得は被相続人の所得として準確定申告をして下さい」と明言しているため、死亡の日の翌日分の賃料からが相続人に帰属する賃料であると考えられているようです。

 この相続人に帰属する賃料について、あらかじめ遺言によって「○○アパートは長女、××マンションは次女」というように決められていればその通りそれぞれの不動産収入となるのですが、遺言によって定められていない場合はどのようになるのでしょうか?

遺産分割協議が終了するまでは法定相続分で不動産所得が帰属する

 遺言で相続分が定められていない場合、相続財産は相続人の共有物となる(民法898条)ため、各不動産から生じる収入と経費を差し引いた不動産所得は、法定相続分に応じて各相続人に帰属することとなります。
 これは、相続人の内の一人が相続開始後不動産の管理をし続けていたとしても結論は変わらないため、相続税が発生しないことから税理士に頼まず自分たちで相続関係を処理しようとする方にとっては、現実の行動に伴わない法律関係となることで誤りやすい点なので要注意です。

遺産分割協議終了後はその実際の取得者に不動産所得が帰属する

 何はともあれ無事遺産分割協議が終了して、特定の一人がその賃貸不動産を取得することになった場合には、当然その不動産に係る所得はその取得者に帰属することとなりますが、遺産分割協議前の不動産所得の帰属はどうなるのでしょうか?

 この点、民法をご存知の方なら、「遺産分割協議の効力は相続開始時に遡って生じる」(民法908条)という規定から、相続開始時からの不動産所得についても分割協議で取得した人の所得になる。したがって、他の相続人は更正の請求をして・・・と考えるかもしれませんが、この点「遺産分割協議終了前の不動産所得の帰属は変更しない=相続開始から分割協議終了までの不動産所得はあくまで相続人それぞれに帰属」という最高裁判決が出ており、国税庁もHPで同じ見解を示しています。 
 理由としては、不動産賃料というのは相続財産そのものではないため、民法の遺産分割協議における遡及効が適用されないということです。(賃料が生じる原因である不動産を最初から一人だけが持っていたものとされるなら、賃料もそれに伴うというのが自然な気がしてなりませんが・・・)

 
 相続税がかからない場合でもこうした所得税に関する問題も生じてきます(他にも青色申告の承認申請書の提出や消費税がらみの申請等)ので、賃貸不動産がある相続が生じた場合には税理士へご相談をされることをお勧めします。

 最後まで読んでいただきありがとうございました^ ^


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