歯列矯正 始めました。

小学生の頃。
通っていた歯医者さんにまじまじと歯を見られながら
「ほんっとにあなたは歯並びが悪いねー」
と言われたものだった。

幼稚園の頃くらいから通っている歯医者さんだったので
信頼関係はそれなりにできていたと思う。
純粋に専門家の意見としてそう言っただけ
悪意がないのは百も承知だったけど
人生で忘れられないフレーズの1つとして今も鮮明に覚えている。

多分、その歯医者さんが大学病院への紹介状を書いてくれたと思うけど、
母が私を大学病院へ連れていくことはなかった。
「うちにはお金がないから」

当時、母は専業主婦で、父1人で家族6人を養っていたから、
無理もないこと。
矯正したいなんて言えるわけなかった。

大人になって、自分で稼ぐようになったら、
お金を貯めて矯正しようかな…
なんとなくそう思っていた。

結婚して、時間にも余裕ができた頃、
意を決して矯正歯科の門を叩く。

あの頃から10年20年経ったけれど、
相変わらず歯列矯正にはそれはそれはお金が必要で。
そこのハードルはやっぱり高かったけれど
私の腹は決まっていた。
が…矯正を全うするためには足繁く矯正歯科に通う必要があって…
当時2年周期で引っ越しを余儀なくされていたことから
あえなく断念。

『ここまでこの歯と付き合ってきたのだから…』
『これからもうまく付き合っていく努力をしよう』

歯並びの悪さは、見た目のことはもちろんだけど、
口腔衛生や健康を維持する上で
結構地味に影響する。

自分で歯磨きするだけでは、とても行き届かなくて、
定期的にクリーニングに通うのだけど、
それでもちょくちょく歯肉炎を起こしては、
ある歯医者さんでは何度も腫れた歯肉をレーザーで切ってもらっていた。

根本的な解決にはならないけれど
ただただ日頃のメンテナンスに気を付けるしかなかった。

40代に入って
加齢に伴って、徐々に歯肉が下がっていることに気が付く。
場所によっては、歯の根元が露出しているのだけど、
そこをブラッシングしすぎるとすり減るらしくて。
(エナメル質でコーティングされていないから弱いらしい)
(ということは虫歯にもなりやすいはず)
(ど、どないせーっちゅうねん!)

宮崎市に定住するようになって
通っていた歯医者さんはちょっと前に閉院してしまい、
最近、近所の別の歯医者に通い始めたのだけど、
やはりここでも毎回矯正を勧められる。

幸い、だいぶ子どもにも手がかからなくなってきたし、
今なら長期で継続的に同じ歯医者さんに通うこともできる。
あれから40年くらい?
歯列矯正にかかる費用はまったく変わりなし。
やっぱり自由診療。
でも、今後リスクが高まる歯周病や誤嚥を考えると、
『今でしょう!』

もう歯医者さんを信じて、身を任せるしかない。

久しぶりに歯を抜いた。
麻酔が切れても、思ったほど痛くはなかった。
混雑していた歯が無くなっただけで
メンテナンスしやすくなった分
すっきりした気分になった。

案外ストレス少なめでイケるんじゃ…

そう甘くはなかった。
口の中に針金が張り巡らされ、装置を付けた自分の姿を
鏡で見たけれど…
『あー、よく見るやつ!』
まさか自分がこの姿になる日が来るとは。
思った以上にシュールだった。

いや、見た目なんて序の口。
ある程度予想はしていたけれど、装置が口の中に当たりまくって、
あちこちに傷が増えていく。

食事しようものなら、
歯と針金の間に食べ物が挟まり、ちっとも取れやしない。

そこで初めて気づいたけれど、どうやら物を食べるときって、
歯や顎だけでなく、舌や頬の内側をうまく使って、食べ物を柔らかく、
細かくして飲み込んでいたらしい!

頬の内側に止まった食べ物を舌ですくおうにも、
舌先が装置の凸凹に当たって傷つくし、
頬の内側で食べ物を押し出そうにも、
やっぱりそこを傷つけてしまう…

なので、十分に咀嚼されないまま食べ物を飲み込まざるを得なかったり、
飲み込むことさえできずに、楊枝でかき出すしかない。

ちなみに、今のところ、歯磨きにかかる時間約20分。

「うちにはお金がないから」
そう言って矯正の可能性を断った母を恨みに思っていたけれど、
子ども時代に経験するには、なかなかのストレスだったはず。

(もちろん子どもの頃から始めた方が良い部分も大いにあるでしょうけど)

私の場合は、しんどいながらも「今で良かったな」って思っています。
ただでさえ、集中力散漫な気質なのに、学校通ってた時期に矯正してたら、
全然勉強が手につかなかったのでは(-_-;)

(あと、出産を経験しているので、痛みの耐性はかなりある (^^;)

多分トータル2年くらいかかります。
次に歯医者にいくのは3週間後。
なんでしょうね…今はただただ早く時間を消費したい。


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