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21歳童貞、風俗で。①

はじめに

みなさんは「かんなみ新地」をご存知だろうか?
兵庫県は尼崎市にあった風俗街だ。
2021年11月、全店舗が閉業した。
ぼくは21歳の6月、そこで童貞卒業した。
これはその帰りの電車内で書いた体験談で、当時の記憶を残しておくことと、かんなみ新地への感謝を表すためにnoteに転記したものだ。

第一章 レツゴー料亭

薄めのシャツが肌にぺったりと貼り付き、嫌なベタつきが残る。もう6月も終わりだというのに梅雨入りはしていないらしい。
「今日暑なるらしいから水飲みや」
これが母と交わした最後の会話になるとは思ってもみなかった。

17時前、いつものように大学を出て、うだるような暑さの中歩く。運動不足気味でしばらく汗をかいていなかったため突如活動を余儀なくされた汗腺も驚いているようだ。
そして最寄り駅につく。そういえば今日は友だちの誕生日だなどと考えつつ電車が来るまでの時間ぼーっとしていたところ、ふと思い立った。

「そうだかんなみ新地に行こう。」

かんなみ新地の詳細はwikipediaを参照してほしいが簡単に説明する。
かんなみ新地とは尼崎と甲子園の間にある出屋敷駅からほど近い新地である。
新地といえば飛田新地が有名であるが、際どいコスプレや公序良俗に反する服装の嬢が表に立ち、横のババアが客引きをして奥の部屋にでよろしくする形態の風俗である。
これのメリットはホームページで吟味する手間は省ける上、パネルマジックに怯えなくてよいのである。(注 : パネルマジック…写真が加工されており実際見てみるとジャバザハットであること。ネタにはなるが避けたい。)
ちなみにソープランドがお風呂屋さんであるのと同様、新地は料亭で、たまたま出会った女の子と恋に落ちるというロマンティックな場所である。

さて、思い立ったが吉日をモットーに日々生きているぼく、かんなみ新地のある出屋敷に降り立つ。思いのほか普通の町だが少し物寂しさを感じる。
もちろん場所は電車内でリサーチ済みなので足早に向かいたいところだが、その前にファミマで1万円を下ろす。明朗会計一律1万円。この時ばかりは手数料は知るか、誤差だ。むしろ三井住友銀行がよこせ、門出を祝え。
これから行く人のために忠告するが、出屋敷駅最寄りのコンビニにはATMはない。かんなみ新地近くのファミマを使うべし。

そしてかんなみ新地に到着、すぐ裏には公立小学校がありかなり異様だ。
それに路面に見える大量の室外機が、約70メートルの通りに店が林立していることを物語る。

かんなみ新地に一歩足を踏み入れた瞬間、客引きババアがサラリーマンにキレる声が聞こえる。
「何回見ても一緒やろうが早よ決めぇ!」
愚息が萎縮していくのがわかる。「そんなことないよリトルハマサキ、おまえは立派だよ、自信持てよ」「ありがとうハマサキ!」
心の中で会話する。

一周見てから決めようと思ったぼくは端から歩いてみる。ミニスカポリスにナース服、時折いる明らか整形30代。
うーん、そんなにやん、ゆーてもかんなみ、飛田には勝てへんのか(行ったことない)と思った刹那、衝撃が走る。寄せてあげているにせよ、でけぇ乳、整形の雰囲気のないナチュラルなかわいさ、そして目があって笑顔で手を振ってくるときの愛嬌。
あぁおれはこの子で進化するのだなぁ。確信を得た。

しかし欲張りなのでとりあえず全店見る。よし、やっぱりあの子。
すれ違ったサラリーマンに取られてはいけない。新地は一期一会。ギリギリの外野フライを追う高校球児が如くダッシュで戻ると、彼女はまだそこにいる。

「おいババア、この子で!!!」
ババアとハイタッチ。

②に続く。

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