5/11 『天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ〔下〕』を読んだ

面白かった。

「始まりの終わりは新たなる終わりの始まり」のお見本みたいに危機と危機が華麗にハイタッチしてメンバーチェンジしてきた。何かある何かあるなあと思いながら読み進めていたけど、ここまでとは。
アクリラの美しき決起や、エランカの静かなる覚悟など、燃えてくるシーンなどもたくさんあったが、この感じだとひょっとしてもう彼らが至近カメラで描かれるシーンはないのだろうか……2巻では「数十年後」「数百年後」とかいきなり言われそうな気がしてならない。あとがきで「ここからどんどんぶっ飛んでいきます」とか言ってるし。

領主が守り続けてきた絶対の秘密。そら大変だわと思いつつも、全部おじゃんなってからそんなキレ散らかされても、下々からしたら、受け止められるかいって話だろう。そういう意味では領主は実によくやったと言える。若い身空で己が背負い続けた十字架を、足の骨が折れるまで隠し通し切ったのだから。もっと早めに誰かにチラ見せしたり根回ししたりしなさいよって言いたいけど、未熟な若き君主にはそれができなかったということか。あるいは黒幕からしたら(もしくは作者からしたら)、そうやってひとりで抱え込ませるためにこのちっぽけな少年を君主に祭り上げたのか。「未熟なる暴君」がなぜ最悪なのかを、こういう形で描くとは。

これから更に予想外の話になると予告されてるのだから、せっかくだから今後の展開を予想してみよう。どうもこの様子だと、この物語は数百年、数千年くらいのスパンで語られる物語なのかもしれない。世界が縦にも横にも広い。その壮大なスケールのごく一部を切り取って見せてくれるタイプのやつか。『ファウンデーション』のような、あるいはコント芸人の単独ライブで、一つ一つの話は独立しているけどちらほら共通する単語や話題の断片が見え隠れし、最後の長編コントでそれらすべての点と点が繋ぎ合わされひとつの壮大なタペストリを織り上げるやつみたいな。お楽しみだ。

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