5/12 上遠野浩平『ブギーポップ・オールマイティ ディジーがリジーを想うとき』を読んだ

面白かった。
『VSイマジネーター』の後日談でありつつ『ブギーポップ・ストレインジ』の後始末。薄々予感していた気もするが、ひょっとすると『ストレインジ』はもう直接描かれることはなく、こうして残滓や影響だけが語られていって、それによって輪郭を浮かび上がらせるという手法なのかも。あたかも第一作『ブギーポップは笑わない』がそうであったように。
そうした『ストレインジ近辺編』の中でも今作では新たに描かれたことも多く、特に霧間凪の水乃星透子に対する感情が垣間見れたのは嬉しい。確かに意外なほどこの二人の関係は描かれていなかったから。わりと紙木城直子と近い位置にいたのかな……「手が届かなかった」という意味で。敵ではあったかもしれないが。でも今回スプーキーEを憐れんでみせたように、霧間凪に敵味方という概念はあまり無いような気もする。
水乃星透子の描写もややアップデートされていた。その笑顔にはどうやら人に勇気を与える力があったらしい。言葉遣いもちょっと中性的になってたな。ああして普通人もMPLSも合成人間も誑し込んで……。
しかし今回のブギーポップはちょっと格好良くなかったというか、格好つかなかったというか、珍しい感じでしたね。殺すべきかどうするか悩んだ挙げ句、倒した筈の相手に「お前の出る幕じゃない」と言われる始末。最後に乙坂くんとぼんやり慰め合ったりしていて、新鮮だった。
乙坂くんもまた、不思議な魅力の持ち主だった。彼の悩みも人生も何一つ解決しちゃいないが、それなのに織機の進路に指針を与えたりしていて。電撃文庫マガジンに載ってた予告編が『織機綺の不慣れな人生相談』だったけど、終わってみれば、真逆の結果となっていた。空虚なれどそれ故に事態の枢軸を握るその性質は、統和機構の中枢なんか向いてるんじゃないかなと思うけど、記憶も消されちゃってるとなるとそれも無理か。またどっかでふらっと出てきて欲しい感じはある。

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