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5/16 『シン・ウルトラマン』を観た

ウルトラマンにはあんまり触れてこなかった。子どものころにはウルトラマンずかん怪獣ずかんみたいな本とかはいつの間にか持っていてそれらを読んでいた記憶はあるが、テレビシリーズなどは見ていなかった。原作というか本線には触れないまま、疾風ウルトラ忍法帖とかバトルドッジボールとかザ・グレイトバトルⅣだけで知ってた。そんな知識レベルで観に行って楽しめるかちょっと不安だったが、考えてみればゴジラもロクに既存作観ないままでもシン・ゴジラ楽しめたのだから大丈夫だろうと思いなおし、果たして大丈夫だった。
お話じたいは元のテレビシリーズのエピソードから何本か抜き出して再構成しているのだとか。至る所にテレビシリーズのネタがちりばめられており、ファンはそれだけで過去と現在が滅茶滅茶にフィードバックしあって大変なことになっていたのだろう。そういうのを見ると、今からでも過去や現在のウルトラマンシリーズを観てみたくなる。いや、或いはそれがこの『シン・』シリーズのねらいなのか。シリーズとしての新しいことみたいのは今現在テレビでやっている最新のスタッフに任せ、こちらは初代や原点の魅力を現代に引っ張ってくる……原点回帰ともちょっと違って、原点と最新点、どちらにもピントの合うレンズを用意してるような感じか。かつての原点ファンには最新作へ、ご新規や最近のだけ知ってる人には原点への、それぞれへ導く窓口の役割を担っているのだろう。映像面で最新のCG技術を駆使しながら音楽やエフェクトはかつてのものを用いていたり、なんならウルトラマンや世界観の設定とそれに付随するツッコミどころみたいなのにもそれっぽい説明を用意するのもその一環なのかも。当時の技術ではこうするのが精いっぱいだったチープな動きを、やはりそれっぽい説明を用意したうえでそのまま使うのも。ただ今風にアップデートするのでなく、過去と現在を混淆させるという意味があるのかもしれない。

開始1秒で怪獣いや禍威獣が出現し、その後も怒涛のテンポで禍威獣や外星人が出てきて話が動いていく。正体もあっさりバレる。ただそれでもシン・ゴジラよりは話を追いかけていけると感じたのは、登場人物が比較的少なかったからか。テロップも少なかったし。
最初に登場したウルトラマンの男、神永新二が、その時点でもうウルトラマンになってるのかどうかわからなかったあたり、斎藤工はいい役者だなあと感じた。「ウルトラマンの男」という呼称もいいよね。そのまま斎藤工じしんにも適用できるところがいい。融合後初の戦闘でふらっと姿を消し、禍威獣を倒してみんなのところに戻った時に手を振って曖昧な笑みを浮かべてるところ、「何だコイツ」感がすごい良かった。
あとまあ、メフィラス山本耕史は、ほんとすごい。予告編の時点でもう人気だったけど、あっさり越えちゃった。いやあんなの好きにならないわけない。シン・ゴジラで高橋一生が刮目されたように、これから山本耕史の時代が来るか。

ウルトラマンが神永新二と人類にそこまで入れあげる理由が、上遠野浩平の『殺竜事件』のソレを思い起こさせ、大変な祝福をいただいてしまったなと感じる。それに対してどうすべきか、人類にそんな祝福を受けるだけの価値があるのかとかの言及は一切なく、あっさりすぎるほどエンドロールへ行ってしまうのがちょっと驚いた。そこは各自で、問うかどうかも含めて、ということか。ウルトラマン(リピア)は神永が自らを犠牲にした理由を最後までわからなかったみたいだが、もしリピアが神永にそれを問う機会があったとして、神永も「いやあ……自分でもわからないな」とか答えたら面白いな、と思った。

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