6/29『空飛ぶタイヤ』を観た

面白かった。 序盤で「今思えば、その時はまだ平和でした――」みたいな長瀬によるナレーションが入り、このおはなしが回想録という体をとっていて、終盤それが被害者の夫に事件のあらましを語っていたのだと明かされるかたちになっているが、それにしては長瀬の知りえない情報とか多々あったのでは。ディーンの商品開発部での冷遇とかわからんのでは。でもまあそれを言いだしたら高橋一生とか全く出てこなくなっちゃうし、あんまり気にしないことだ。
と言って高橋一生が一体何をしたのか今一よくわかってはないのだが。「俺に考えがある」とか言っていた高橋一生の上司も何の考えがあり何をしたのかよく分からん。銀行まわりの事情は基本フワッとした理解しかできてない。最終的に高橋一生がグッドスマイルカンパニーの社章にしたくなるくらいの笑顔を見せてくれたのでそれで丸め込まれた感じ。なんだあの笑顔。
リコール隠しの事件でありながら、敵も味方も動きをほとんど隠すことなく描いてくれているので、アッと驚く展開とかそういうめくるめくダイナミックさみたいのはあんまりない(「新車だったんですよ」のとこぐらいか)。だからこれはある種の戦争モノというか、戦局の移り変わりとそこでの現場現場の人々の心ざまを観る映画であったのかも。最近観たのでいうと『関ヶ原』みたいな。運送会社、自動車販売会社、企業のある部署、また別の部署、その上の部署、その下の部署、銀行、別の銀行、マスコミ……と、勢力や組織が続けざまに出てきて事件に絡んでいく、人と動きの増加そのものがダイナミズムというか。
長瀬、最初の方は台詞がなんだか棒読みぽかったなと思ったんだけど、それは慣れない社長業をえっちらおっちら頑張ってるという演出だったのかもしれない。その証拠に物語が進んで心身ともに疲労していくにつれ棒読み感はなくなり、とても馴染んできた。疲れてる長瀬智也はいい……。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?