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2023年12月の記事一覧

12/30 『七つの魔剣が支配する ⅩⅢ』を読んだ

なんとも息が詰まる巻。一年生編がアニメ化されたこともあって、四年生の制服で憂鬱な面持ちでいられると否が応でもオフィーリアの悲劇を思い起こさずにはいられない。実際キンバリーにおいてもここらがひとつの節目なのではって感じがある。前巻におけるバルテ姉弟しかり、単純な不運や力不足でリタイアするのではない、ひとしきりの成長を遂げたが為に「魔に呑まれる」という末路が確かな実感を持って魔法使いの前に立ち現れるのが、この時期なのだろう。オリバー達は辛くもそこをしのぎ切れただけでも、上出来だっ

12/27 『ずっと一年生⁉ トラブル解決大作戦』を読んだ

まずイラストを一目見て「カワイイ」と興味を抱き、次に作者が宗田理だったのを見てマジか? となった。さらにあらすじを読むと、何年も留年しててずっと一年生の女子生徒がいろいろ飛び回って活躍する……とあり、こォんな癖強なものを宗田理が……⁉ と目を疑う。もしや新シリーズ開始なのかと思いきや、2003年に刊行されたものを角川つばさ文庫版として出し直したものだった。しかし『ぼくら』シリーズに負けず劣らぬ、とても良いキャラだ。 お話は短いエピソードを積み重ねていくシンプルな構成で、出てく

12/21 『狂骨の夢』を読んだ

中学生の頃に読んだ『姑獲鳥の夏』と『魍魎の匣』を少し前に再読してからの、満を持していよいよ踏み出した未体験の京極堂というわけである。そしてそれは矢ッ張り難物だった。『姑獲鳥』と『魍魎』を再読して、なんだ結構スイスイ読めるぞ、さすがに10年前とは読者力がダンチだ……とか思っていたが、なんのことはない、再読だからスイスイ読めてただけだった。初読の京極堂はやっぱり手ごわい。しかし、楽しい。ジョギングを始めて、少し慣れてきた頃の感覚に似ている。 冒頭の「朱美」の夢と現実の混淆から、伊

12/6 『身分帳』を読んだ

映画『すばらしき世界』を観て感動し、劇場を出たその足ですぐさま下階の書店に赴き購入した原作小説。その文体は映画の雰囲気とよく似ていて、結構間が空いたにもかかわらず映画の記憶がするすると浮上してきて、思い起こしつつ面白く読めた。 小説の主人公である山川の年齢は45歳で、映画の主人公である三上は役所広司が演じているのだし、もうちょっと歳上の感じで描かれていたような気がする。でももう頭の中では役所広司のイメージしか描けなかった。特に違和感はなかった。時代設定も昭和61年でこれも映

11/29 『インナーアース』を読んだ

初めて読む作家。手に取ったきっかけは、なんだったか……たまたま目についただけだったか。目について、表紙とあらすじとオビの博多大吉推薦コメントに惹かれて買ったんだったかな。 地下20kmに存在した大空洞にスーパーマシンを駆って探険・計測行という、ハリウッド映画みたいなスケールのあらすじだが、冒頭は地図製作会社の日常的な仕事風景が描かれる。ただこれはこれでけっこう面白く、地下に潜らなくても、地図製作の日々を描くだけでも一本作品ができるのではないかと思わせる。 地下に行く手段はどう