虫干し2

新宿方丈記・17「5月のウィークエンド」

若い頃、暇さえあれば(なくても)ライブやらイベントやらに出かけていた。長いこと下北沢に住んでいたので、ジーンズにTシャツで、ポケットに財布とハンカチだけ入れてふらっとライブハウスに行くことが多かったが、MODS MAYDAYみたいな、おしゃれして集う様なイベントにもよく行っていた。そういう時に、あれ?と思うことがよくあった。年に1度のお祭りみたいなものだから、みんなそれぞれ工夫して綺麗に着飾っていたし、オーダーメイドと思われる素敵なスーツや羨ましくなるようなヴィンテージのワンピース、頑張って手作りしたんだろうなっていう凝ったデザインのセットアップなど、本当に見てるだけで楽しくなるのだけれど、所々に違和感を感じることがあるのだ。主役のワンピースは完璧なのに、何かが違う。髪型まで上手く60'sでまとめているのにどこかちぐはぐ。その理由は?…気付けば簡単なことだった。例えば、靴もレトロなテイストにはしているけれど、服とは微妙に時代がずれている、とか。どうしてその格好にそのバッグ持っちゃうかなあ、とか。そのタイツの色は違う!、とか。本当に本当に、些細なことだったのだ。本人はそのズレに気づいていない。もしくは本流はバッチリだから、細かいところはこのくらいでいいや、っていうちょっと雑な感じ(これが多い様に感じた)。こだわり多きおしゃれな方ならおわかりいただけると思うが、この、小さな違いがまさに大きな違い。些細なことを蔑ろにしたばっかりに、全てぶち壊し。それくらいいいや、じゃなくてそこがすごく大事なのに!神は細部に宿る、とはうまく言ったものだと思う。そしてそれに気が付いたら、もう怖いものなし!だっておしゃれな人を見れば、答えは一目瞭然だもの。この辺り、テストに出るくらいの重要事項である。

当時、5月の第3土曜は川崎に行く日だった。気付けばいつの間にか足は遠のき、イベントの規模は小さくなり、日付も場所も変わっていた。みんな大人になり過ぎるくらい、大人になって、いい年齢になっちゃったけど、代替わりしても続いていけばいいのになあと、私は思っている。ここ数年の私は、5月の第2土曜からスタートする展示に照準を合わせて、1年のスケジュールが決まる。今日はもう仕上がって箱に納めたはずの、人形の衣装の一部が気になって、2時間かけて作り直した。人形だっておしゃれと同じで、些細なことを蔑ろにすると全ておしまいなのだが、今日の私みたいなのは、ただ往生際が悪いだけ、とも言う。それでも「小さな違いが大きな違い」を何に於いても信仰しているから、いつ何時も手を緩めてはいけないのだ。



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