交差点2

新宿方丈記・1 「大都会」

新宿区に住み始めて、5年になる。

新宿に住んでいる、と言うとみんな口を揃えて「大都会ですねぇ」と言うけれど、新宿の全てが大都会というわけではもちろんない。新宿駅前や歌舞伎町がずっと続いているわけでもなし、いたって普通の住宅街だってある。その、いたって普通の住宅街に住んで5年になる。東京に出てきて二十数年経つが、そのうちのほとんどを下北沢に暮らし、そのあと高円寺に越して8年ばかり住んだ。独特の文化が存在する二つの街にいたせいだと思うが、今のあまりに何もない、ごく普通の街に戸惑うこともしばしばだ。我が家の近くに限ってのことかもしれないが、まず閉店が早い。コンビニ以外の24h営業の店をほとんど見かけない。不夜城の高円寺はスーパーもカフェも朝までやってるし、ATMだって夜11時頃まで開いていた。完全にその生活に慣れてしまった私は、最初は普通に夜が訪れることに面食らってしまったのだ。

だってここ、新宿でしょ!?

この頃は自分にも新宿=大都会の固定観念がしっかりあったのだろう。 2012年(引っ越した当時)の東京の新宿で、当たり前のように朝が来ると目覚め、夜になると眠る街に驚き、そして自分でも意外なほど愛着を覚えたのだった。身も蓋もない言い方をするならば、高円寺よりも圧倒的に不便な、新宿の暮らしがスタートしたのである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?