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共通戦術装輪車にまつわるエトセトラ

2024年8月30日、令和7年度防衛省予算概算要求が公表されました。また、同時に様々な資料が公表され、新たな情報を知る1日となりました。

これらの中から共通戦術装輪車に関わるものをピックアップし、まとめようと思います。

共通戦術装輪車についてはこちらから

令和7年度概算要求

令和7年度予算でも共通戦術装輪車の調達が要求されました。
令和6年度予算でも調達はされましたが、3車種そろっての予算化は令和7年度が初めてです。
また、令和6年度に予算化されていた歩兵戦闘車型と機動迫撃砲型についてはそれぞれ
「24式装輪装甲戦闘車」
「24式機動120mm迫撃砲」

と制式名が決定されたようです。

令和7年度概算要求より

昨年、「歩兵」の名称を使ったまま予算化されたのには驚きましたが、制式名に「歩兵」の文字は使わないようですね。(あくまでも歩兵戦闘車「型」)

各車種の要求数は以下の通り

歩兵戦闘車型 18両 (R6実績 24両)
機動迫撃砲型 8両  (R6実績 8両)
偵察戦闘型  6両 (R6調達ナシ)

歩兵戦闘車型について、昨年より調達数が減少しています。総調達数が落ち込むのでは?と思いましたが、実態は逆のようです。

プロ管から見る共通戦術装輪車の調達数

プロ管(プロジェクト管理対象装備品等の現状について)に掲載される一部装備品にはライフサイクルコストを計算するために総取得数が記載されています。

将来の取得及び運用数量を確定するものではない」との記載もありますが、でたらめな数字は用いないだろうという前提で話を進めます。

各車種の総取得数は以下の通り

歩兵戦闘車型 232両 (150両)
機動迫撃砲型 102両 (100両)
偵察戦闘型 116両 (記載なし)

括弧書きの中の値は令和6年1月に公表された「新たな重要装備品等の選定結果について」の中で、同じくライフサイクルコスト計算の根拠となった数字です。

プロジェクト管理対象装備品等の現状についてより

24式装輪装甲戦闘車の調達数

150両から232両と大きく数字を伸ばしたのがICV型です。一方で来年、再来年の調達が無いことが示されています。

教育部隊等に20両ほど配備したと仮定し、残り212両。現在までに創設された即応機動連隊の普通科中隊19個で割ると、各中隊に11両ほど配備できる計算になります。
一方で、現在、即応機動連隊の各普通科中隊には8両ほどのWAPCが配備されているようです。

偵察戦闘大隊にもWAPCが配備されており、「MCVと共同した乗車戦闘」という配備趣旨からして、こちらにも配備が行われるのではないかと予想しています。

これらの情報を基にすると以下の2パターンの配備予想が出来るのでは無いでしょうか。

①普通科中隊の数が変わらないパターン

即応機動連隊普通科中隊 各10両 ×19 =190両
偵察戦闘大隊 戦闘中隊 各4両 ×7 =28両
教育部隊等 14両

②1コ中隊あたりの装甲車数が変わらないパターン

即応機動連隊普通科中隊 各8両 ×24 =192両
偵察戦闘大隊 戦闘中隊 各4両 ×7 =28両
教育部隊等 12両


現在、第3即応機動連隊のみ第4普通科中隊が編成されています。4個中隊編成が基本となる場合、②の配備方法が採られるでしょう。

配備パターンについては予想が難しいですが、新たな即応機動連隊の編成や第7師団第11普通科連隊への配備等は考えづらく、上記2パターンのどちらかになるのではないでしょうか。

24式機動120mm迫撃砲の調達数

MMCV型については今年初めとほぼ変わらず102両となっています。また、調達についても毎年8両ほど安定して調達されていくようです。
こちらは、即応機動連隊火力支援中隊に各16両配備すると、16×9=96両となるため、各中隊16両という予想数で概ね正しいのではないかと考えています。

偵察戦闘型の調達数

今回新たに示されたのが偵察戦闘型の116両という数字です。偵察戦闘型は偵察戦闘大隊偵察中隊と各偵察隊に配備されると思われます。
87式偵察警戒車の調達数が111両であることを考えると、ほぼ1対1での更新となり、配備先も変わらないという予想ができそうです。

ICV型の乗車定員について

プロ管の中で「11名乗車できること」という記載があり、これを基に「後部乗員が」11名なのではないかという意見があるようです。

共通戦術装輪車仕様書より

仕様書では明確に、後部乗員8人と示されています。その他に車長、砲手、操縦手の3人を合わせて11人の「乗車ができること」という意味だと考えられます。
機動迫撃砲の「5人」についても、仕様書における車長、操縦手、照準手、弾薬手、砲手の5人と符合します。このことからも、プロ管における「乗車できる」とはその車両に乗ることが出来る最大人数であるとの解釈が正しいでしょう。

対地偵察・警戒・監視用UGV

第三回人的基盤の抜本的強化に関する検討委員会のの会議資料の中で登場したこちらのUGV。なんと、イメージ図が共通戦術装輪車の亜種になっていました。

どう見ても共通戦術装輪車なUGV

対地偵察・警戒・監視用UGV自体は、令和5年度予算の概要に既に登場しています。これによると、監視用UGVは駐屯地・重要防護施設等の警戒監視に用いられることが示されています。

令和5年度予算の概要より

通信設備等、駐屯地のインフラを頼ることができるため、野戦の正面戦闘で用いるUGVの開発よりはハードルが低いのかも知れません。それでも本当に共通戦術装輪車の車体を流用するのだとすると、驚きしかありません。

きみ、本当に「UGV」?

共通戦術装輪車に各種センサーを取り付けてUGVとしているせいで、運転席やミラーがあったり、なんとも不思議なイメージとなっています。小改造でICV型に改造できるようにしてるのでは?と邪推もしてしまいます。
共通戦術装輪車とは運転席が左右逆についていますが、これはおそらく共通戦術装輪車のCGを左右反転して使用しているためだと思われます。

共通戦術装輪車の運転席は正面から見て左にある

色々と邪推が捗るイメージ図ですが、今後も注目していきたい事業ですね。

陸自の機械化への道

810両ともいわれる調達数が見込まれる次期装輪装甲車と合わせて、陸自の機械化を進めることになる共通戦術装輪車。今後も新たな情報が公開され続ける装備品でしょう。これからも注目して情報を追っていきたいところです。

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