うわさの助六!(ネタバレ注意)

歌舞伎といえば、助六でしょ?みたいな気がしなくもない。と、いうか、そういう雰囲気をそこはかとなく感じる。
どうやら詳しい人にとっては「やっぱり見なくちゃね」みたいな演目らしい。
私、そのあたりはまったく察しもせず、あまり興味もなかったのです。
というのは、どうやら助六は市川海老蔵さんところのお家芸だというところで、海老蔵びいきではない、というよりむしろ何度か海老蔵さんを他の演目で見たけどいまいちピンとこない、という理由で、興味がなかったのですね。
それなのに、やっぱり見に行ったのは、お友だちが見にいくという話を聞いて、そんなに人気なんだ、とちょっと興味がわいたのが一つ。
ちなみに見たのは、幕見席です。幕見というのは、見たい演目だけ、さっと2000円とかで見られるシステム。歌舞伎って実は普通に見るとやたら長時間だったりするし、お高いから、よい仕組み。
そして、もう一つの理由。
同じ銀座で「クーリンチェ少年殺人事件」という90年代サブカルっ子にとっては伝説的な作品が25年ぶりに上映!肖像権の問題で幻になってたあれが!!公開ですって〜!というタイミングだったからです。
そして微妙にこちらの映画の上演演時間に間に合わず、そもそも前売りチケットも、うかつに買ってなかったし、みたいな流れで、んー、じゃあ出直すか、となりました。
が、金曜日のこのうかれ気分どうしてくれよう、ということで、気分華やぐ歌舞伎ちょっと見ようか、と相成りましたのでございます。
幕見に並ぶとほぼ最後尾、これは場所はどうかな、と思ったけど、花道の延長線上をかろうじてキープ。もちろん立ち見。
この助六、江戸時代からの演目らしいのですが、前知識としてはなんかハチマキしてるよね。魚河岸の人が助六役にプレゼントするんでしょ?ぐらい。
筋としては、もてもてマン助六が、ちゃらそうに見えて、実はカタキうちするらしい、ぐらい。
そんなレベルだったのですが、幕があいたら見事にそのまんま!!
そのまんまの話。
驚きはない。
でも、これが、目に素敵。
助六は男ぶりがよく、すっきり涼やか。相手役の花魁、揚巻ちゃんは絢爛豪華なきもので、ただひたすらあでやか。
何より、助六って、歌舞伎と聞いて人がイメージするビジュアルと音がすべて詰まっている。
決め姿、セリフ。
白塗りでしょっぱおりで見得切って。
女も男もただ色っぽくて。
そのせいか、私、これ、いつかどこかで見たことある!?みたいなデジャブ感があり、いっぽうで日本人なんだな、とDNAが騒ぎ、心の底からたぎってくる、みたいな。
そして天井桟敷、花道延長線上にいたのが、正解、なんですね。
助六が見得を切る角度、黒白の傘の模様、すべてが美しく計算されつくしている。
赤と黒の潔すぎるきもの。江戸紫と呼ばれる、深い色のはちまきが額を横切り、すっとした目を、鼻を際立たせる。
投げ出される脚と下駄の音。腕のなめらかなライン。鋭角なのに、ほのかに感じる曲線。
ああ芝居小屋ではここから見下ろした姿を、何よりの正面にして作り出されていたんだな。
そう思うと、時を超えて、私もぎゅうぎゅうづめの人いきれの中、息をつめて舞台を、その美しさを守っている町娘になったような。
ふと江戸時代につながったような気持ちになったのです。
それにしても、幕切れだけは、超意外。え? ここから面白くなるんじゃないの?というタイミング。
私なんてまわりがぞろぞろ立ち上がる中、ようやく座れるよ〜って席取りしそうになりました。
話のテンポもゆっくりめだし、江戸の人って結構ピュア!?
スターを愛でる、という意味では間違いないんだけど、江戸時代とのつながりと違いを感じる、印象的な演目でした。
ところで〜!
のり巻きとおいなりさんのお寿司を助六ってなんでなんで?
いけてる男だって流行りのネーミング?? (3月17日)
#歌舞伎 #市川海老蔵 #助六 #菊五郎

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?