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見たものつれづれ帖

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お芝居、歌舞伎、映画に将棋。たまに日常。まれにおいしいもの。心が動いたものの覚えがき。
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#中村七之助

10年ぶりの天日坊

10年ぶりの天日坊

座席に座って幕が開くまで、すっかり忘れていた。天日坊ってどんな話だっけ?
10年ぶりの再演と聞いていたけれど、そもそも10年前の私はどんな毎日を過ごしていたのだろう、それすらもちょっとあやふやで。どこの部署にいて、どんな思いで、誰と仲良くしていたのか。ぼんやりと曖昧なのに、ただ前に見たときの鮮やかな幕切れと、主人公のラストの絶叫だけがはっきりと心に残っていた。

「俺は誰なんだ??」

前に見たと

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炎と水と

炎と水と

こいつぁ春から縁起がいいわぇ、というわけで、初春大歌舞伎に。歌舞伎座の中にはお正月飾りが飾られて、華やかで浮き立つような。来ているお客さんのわくわくする気持ちが漂っていて、やっぱりいつもと違う気分。
昼の部の吉田屋は、またもや七之助さんが演じる三大女役なんだけれど、勘三郎さん追善公演に行ったばかりで、そんなお大尽っぷりを発揮できるわけもなく、幕見狙いにして、夜の部のみ行ってきました。
実は芝翫さん

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ただそこにいるすごさ

ただそこにいるすごさ

10月からの中村屋さんまつり。もちろん行きました。昼夜行って、悩んだけど2回目は辞めて、幕見で夜昼のハイライトを狙って駆けつけて。
歌舞伎良いな〜という、もともとのきっかけは、勘三郎さんなんだけど、お父さんもっと見たかったな…という思いは不思議となくて、なぜならやっぱり2人の兄弟の中にちゃんと生きてるから。それをひしひしと感じた。
どれほどまで、たくさんの時間と芝居への愛、息子への思いを、注いでき

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悪ものが美しいのは舞台だから

悪ものが美しいのは舞台だから

ちょっと前だけど、8月の納涼大歌舞伎のはなし。悪い七之助が大好きなので、楽しみにしていた、盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)。チケットを完全に取り忘れていたから、久しぶりに外国人観光客に混じって幕見に行った。大学時代とか、まだぴよぴよOLだった二十代の頃は、そんなにお金もないし、もっぱら幕見ばかりだった。天井桟敷そのものの高さは、まるで芝居の神様の目線のようで楽しい。なんだか久しぶりにワクワク

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赤目の転生

赤目の転生

実はいろいろ心配してたんです。
見る前は。
現代の言葉でやるとか聞いたし、蓬莱竜太さんのこともあまり知らなかったし。でも、杞憂でした。
刺激的でした。
興奮したし、ときめいたし、やるせなかったし。何より驚いたし。
愛する女性のために、何度も何度も転生するお話でした。
最後にきれいに輪がつながり、心の中に、ストンと落ちました。
驚きは、もちろんあったんだけど、暗い予感も確かにあった。
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