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あなたに #短歌条例

今ここであなたと話していたかった。水平線に夕陽が落ちて、灰色のコンクリートに刻まれた二つの影は重ならなくて、伸ばしてもこの手が届く日は来ない。そんなことだけ知っていたけど。

躊躇って笑っていたね。右側に僅かに傾げ、柔らかな耳朶が光に透けていたとか、誤差のよな記憶ばかりを胸に抱えて、壊される日の朝までも間違いだらけで手放さないで、待ち望む未来は既に赤色のペンで切り捨てられているのに。

会いたいよ。そんな言葉を投げてみる。空気の波は何処まで届く? 最果ての宇宙にさえもささやかな夢はあるから否定しないで。遠ざかる温かい指柔らかな身体のこと思い出すだけ。

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