手にしては
手にしては捨ててしまって指先に感覚だけがしがみついている。朝が来たよ。夢の中、君は何を捨てて、何を握りしめていたのだろう。
視界の片隅に鴉が飛ぶ。彼らは地上に土地を持たないから、隠れた天界の支配者なんだ。彼らが鳴いたとき、誰かの魂は空に駆け巡る。次に飛んでゆくのは君の魂かもしれない。僕には何も止められない。
君はきっと恐れないだろう。全てのものを諦めているから。何も果たそうと考えず、何かをこの世界に刻みつけることへの執念さえ失って。
僕は先に行くかもしれない。そんなこと君には全く関係ないのだと思う。こんなことを言うのは僕の自己満足でしかない。君は憐れみすら持たないから優しいんだと思うよ。
朝が来たよ。だからさよなら。
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