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悪夢も夢の一事象 #短歌条例

遠ざかる船を見ていた。明日には世界の果ての崖に落ちるね。想像はしているけれど、本当は、あの船に乗りたかったんだよ。光る波切り裂いていく物質の力を少しもらいたかった。

かもめたち、鳴いているのね。
彼女らも空より海に生きたいのよね。
君は波ばかりを見てて、涙など誰にも見せずしまおうとする。さみしいと呟きません。海に棲む僕の先祖が笑ってしまう。強がりもかわいいだけで柔らかい髪を撫でれば何も言えない。

黒雲が近づいてくる港にも、光は届きまた奪われて、灯台が照らす土地には誰ひとり彼を明るくしてはくれない。ささくれのような痛みが闇の中近づいてくることを知ってる。夢のよな光も悪夢の一事象。認識しても腕を伸ばしてしまうのは、魂のこと切り捨てて生きてきたから焦がれてしまう。
さようなら。消えていく船。明日には僕は魚の姿でいます。

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