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工藤 弥生
2017年2月15日 08:25
緩慢な崩壊の音を聴いている。それらは小川のささやきのように、いつも私達の鼓膜をか細く震わせている。心地よい記憶が喪失していくような、柔らかなうねりの中で、さやさやと、さやさやさやとそよいでいるのだ。空は、終わったね。海も、終わったよ。大地は?ささやきには誰も答えないでいる。鈍色の太陽が優しく包む。風が遠ざかりながら、救いの名前を置き去りにしてゆく。崩壊の音はいずれそれだけで世界を覆